資料4

開発課題名「光周波数標準用超高品質光キャビティーの開発」

(平成20年度採択:要素技術プログラム【一般領域】)

チームリーダー : 櫛引 淳一【東北大学大学院 工学研究科 教授】
中核機関 : 東北大学
参画機関 :  (独)情報通信研究機構
日本航空電子工業(株)
T.開発の概要
 次世代光周波数標準を実現するため、その要素技術の一つである超高品質光キャビティーの開発を行う。超音波マイクロスペクトロスコピー技術による線膨張係数(CTE)評価法を用いて、CTE分布が±5ppb/K以内、ゼロCTE温度が20〜25℃となる超低膨張ガラスキャビティー材料を開発する。また、超低損失・高反射率多層膜ミラーを開発する。これらを組合せ、フィネスが100万以上の共振器を実現する。
U.中間評価における評価項目
(1)超均質超低膨張ガラスの作製
 CTE分布が±10ppb/K、ゼロCTE温度が5−35℃という均質TiO−SiO ULEガラスの作製という目標を達成することができた。均質化を行っていない市販TiO−SiO ULEガラス基板のCTE分布は30−40ppb/Kであり、均質化処理の有用性を実証した。
(2)超高反射率多層膜ミラーの作製
 成膜条件の最適化を行い、35層の多層膜で得られた消衰係数から、この条件で45層まで層数を増やせば、目標値は達成できる見込みである。
 当初の45層の多層膜では吸収散乱損失は、15.4ppmであった。成膜条件の最適化により消衰係数の低減した膜の吸収散乱損失は、6.9ppmであり、目標を達成することができた。
(3)フィネス計測系の構築とサンプルミラーの光学特性評価
 フィネスを2%以下の精度で決定し、ミラー反射率を6桁の精度で計測することを達成した。開発したフィネス計測系は要求性能を満たしている。
(4)光キャビティーの性能
 45層の多層膜を作製すれば反射率は99.999%を超える見込みであり、フィネス300,000は達成できる。
V.評価
 優れた素材メーカーと独自性の高い計測技術をもとに超高品質キャビティの作製技術開発を着実に積み重ねており、ほぼ目標値をクリアしている。今後さらに高品質化するには、素材と成膜プロセスの一段の高品質化が求められる。最終目標のフィネスを達成するためには、不純物と欠陥の低減に相当の努力が必要であり。出来上がった結果としての材料評価だけでなく、素材やプロセスの欠陥要因の抽出と除去へ一歩踏み込む方策も念頭に置き、開発を着実に推進すべきである。[A]


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