チームリーダー : |
粟津 邦男【大阪大学大学院 工学研究科 教授】 |
中核機関 : |
大阪大学 |
参画機関 : |
大阪大学(医学部付属病院) |
- T.開発の概要
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高度光診断治療を実現するためには生体組織の正確な光学定数(吸収係数と散乱係数)を決定する必要がある。このため、本開発では、透過率・反射率を正確かつ広帯域に測定可能な双積分球分光分析技術、透過率・反射率から吸収係数・散乱係数を算出するプログラム、吸収係数・散乱係数を利用して細胞や生体組織の特性を定量評価するプログラムの開発を行う。本技術は光診断治療に定量的な概念を導入し、より安全な光診断治療を実現するための有力な要素技術となる。
- U.中間評価における評価項目
- (1)積分球光学系、サンプルホルダーの開発および評価
- 積分球光学系は、完成した。可視域・近赤外域(350−2500nm)は、スペクトラロンコート双積分球を用い、積分球に導光するビーム径1mm以下を達成した。中赤外域(2.5−1.25μm)は金コート双積分球を用いているが、導光するビーム径に関して、さらなる検討が必要である。
サンプルホルダーは、全波長域に対し、厚み調節幅が〜13mmで、0.5μm単位で可変制御可能なものの開発に成功した。
- (2)光学定数算出アルゴリズムおよびプログラムの開発
- 逆モンテカルロ法を用いた、吸収係数スペクトルおよび散乱係数スペクトルを算出できる高速アルゴリズムとそれに基づくプログラムを開発し、生体模擬試料を用いて、有効性を実証した。
光線力学的療法後のがん組織モデルを用い、吸収係数・散乱係数を用いて、治癒過程のマッピング解析プログラムの有用性を確認した。
- (3)応用研究に向けての検討
- 波長2.94μmのEr:YAGレーザーによる生体軟組織の凝固治療のモデルに対して、波長350−1000nmの吸収係数・換算散乱係数の照射ドーズ依存性について検討を行い、レーザーの照射時間に伴い、目視では検出できなかった変化を、吸収係数・換算散乱係数では検出できるとの結果を得た。
- V.評価
- ハード、ソフト、応用研究において、可視域・近赤外域では、開発が順調に進み、光線力学療法に対応するデータが得られつつある。中赤外域においては、光源とビーム検出法の選定を進めることにより、今後、データの取得が期待でき、全体としては、ほぼ順調に進行している。
マッピング解析で光診断治療における本装置の有用性が示されつつある。可視域・近赤外域のみならず、レーザー治療で汎用される中赤外域も含め、応用研究でのデータ取得を行いつつ、開発を着実に推進すべきである[A]。
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