資料4

開発課題名「ナノ構造制御LaB次世代電界放射電子銃の開発」

(平成20年度採択:要素技術プログラム【一般領域】)

チームリーダー : 唐 捷【(独)物質・材料研究機構 材料ラボ一次元ナノ材料グループ グループリーダー】
中核機関 : (独)物質・材料研究機構
参画機関 :  (なし)
T.開発の概要
 これまで、電界放射特性のよいLaBのナノワイヤー(数10nm径)などのナノ構造化に初めて成功し、ナノ構造LaBは電子源として従来にない高輝度、大電流密度、長時間安定性などの特性をもつことを明らかにした。本課題では、LaBをナノ構造制御により、冷電界放射点電子源としての使用を可能とし、最適化した。このことにより、次世代高輝度・高分解能電子銃を開発する。この電子銃開発により、電子顕微鏡などの電子銃を使用する計測・分析機器の性能は飛躍的に向上する。
U.中間評価における評価項目
(1)高品質LaB単結晶ナノワイヤ作製の最適化
 結晶方位を001面に制御した欠陥の無い完全結晶のLaBナノワイヤ作製技術を確立した。開閉式管状炉に組み込んだCVD装置を設計・作製し、ナノワイヤ作製プロセスを精密に制御することを可能とした。また、ナノワイヤの直径を20−200nmに制御、長さ30μm以上とする技術を確立し、作製したナノワイヤが劣化・組織変化を生じず、十分な比抵抗値、導電性等の物性を備えていることを確認した。
(2)LaB単結晶ナノワイヤ電子源作製プロセスの確立
 ナノワイヤの断面が矩形であること、並びにファンデルワース力を駆使するナノワイヤハンドリング装置を開発し、200nm以下のナノワイヤをピックアップ、任意の位置への移動、所定の位置への精密配置を可能とした。また、配置後のナノワイヤの方向や位置補正等も容易とした。LaBナノワイヤを電子源とするために、通常の電子源であるタングステン針の先端にさらにナノワイヤを接合させた。接合のため、カーボンを接合部にパッチ状に複数配列蒸着させ、固定を完全にする方法も開発した。
V.評価
 LaBを電子源とした電子銃を目標とした要素技術の開発である。単結晶ナノワイヤの作製方法を確立し、安定したエミッションを得ている。ナノワイヤの固定にファンデルワールス力を利用するなど、優れた着想で開発を進めており、開発の進展に注目したい。今後は製品化を目指してメーカーとの共同研究を進め、より明るい電子源とすること、また、一度使用した後のフラッシング技術の開発にも留意しつつ、開発を着実に推進すべきである[A]。


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