資料4

開発課題名「ナノスケール高周波磁場検出・磁気力顕微鏡」

(平成20年度採択:要素技術プログラム【一般領域】)

チームリーダー : 齊藤 準【秋田大学 工学資源学部 教授】
中核機関 : 秋田大学
参画機関 :  秋田県産業技術総合研究センター
T.開発の概要
 高密度磁気記録媒体などの微細磁化状態の評価に現在広く用いられている磁気力顕微鏡をベースとして、新たに見出した交流磁場印加により磁性探針に発生する探針振動の周波数変調現象を利用したナノスケール高周波磁場検出・磁気力顕微鏡を開発する。目標スペックは空間分解能が10nm、最大検出周波数が数MHzである。開発する顕微鏡は高密度化・高周波化が進む次世代高度情報デバイスなどの研究開発に有用なツールとなる。
U.中間評価における評価項目
(1)高空間分解能検出技術の確立
 磁気記録ヘッドを観察対象として、磁場周波数100Hzにて交流磁場像の空間分解能評価を行った結果、探針を試料表面に近づけることで目標を上回る8nmを達成した。高周波数領域では1.2MHz程度までの交流磁場の強度像および位相像が得られ、やや不鮮明な像であったが、高出力探針励振系の導入、高保磁力の磁性探針の利用、探針−試料間の距離の最適化、レーザードップラー変位計の導入等計測条件の改良により更なる分解能向上の検討を行う予定である。
(2)周波数変調検出部の性能向上
 交流磁場像の画像化に用いる探針振動の周波数変調を高い周波数範囲で高感度に検出するため、探針の加振周波数を調整することで周波数変調による振動スペクトルの周波数を共振周波数に一致させて交流磁場計測を行う方式を新たに提案し、そのための電子回路を作製した。2MHzに探針を励磁し、振動検出器として用いているフォトディテクタで1.7MHzの交流磁場を捉えることに成功した。
(3)高周波磁場印加機構の開発
 小型リングコアから成る電磁石を作製し、顕微鏡に導入した。ソフト磁性探針に交流磁場を印加したところ、1.7MHz程度まで探針振動に周波数変調が発生することを確認した。
(4)周波数変調検出部の性能向上
 磁気記録ヘッドの製造メーカとの共同研究により入手した磁気記録ヘッドを本試作装置で評価したところ、磁気ヘッド素子の性能評価に極めて有効である旨の回答を得た。
V.評価
 いままではシミュレーションでしか得られなかった高周波の磁場分布を、磁気力顕微鏡をベースとした独自の検出方法で、初めて実測・イメージングを行う。開発は当初計画に基づき順調に進んでおり、磁気記録ヘッドの製造メーカと共同研究を行い、性能評価装置として有効であるとの評価を得るなど成果を上げている。今後は更なる分解能の向上など要素技術確立に力を注ぎ、開発を着実に推進すべきである。[A]


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