資料4

開発課題名「生体反応の定量化をめざしたオプトQCM装置の開発」

(平成20年度採択:機器開発プログラム【応用領域】機能材料・デバイスのマイクロからナノレベルに至る構造と組成・状態のシームレス分析計測)

チームリーダー : 岡畑 恵雄【東京工業大学大学院 生命理工学研究科 教授】
中核機関 : 東京工業大学
参画機関 :  (株)アルバック
T.開発の概要
 細胞表層での分子認識、細胞内での転写・翻訳などのさまざまな生体反応を光反射型水晶発振子マイクロバランス(オプトQCM)法を用いて定量的に解析できる計測装置を開発する。オプトQCMは、QCM金基板表面の反射率測定(ΔR)から吸着物質の質量を、ネットワークアナライザ駆動型QCMの振動数変化(ΔF)から吸着物質の水和量変化を、エネルギー散逸値変化(ΔD)から粘弾性(コンフォメーション)変化を同時に検出できる。本方法を利用すれば、多くの分子が時空間的に関与する複雑な生体内反応を質量変化やコンフォメーション変化として定量化でき、医療や創薬、食品産業などで広範囲に活用できる。
U.中間評価における評価項目
(1)ネットワークアナライザ駆動型QCM装置の開発
 水晶発振子のカット角を最適化することにより、水中での振動数安定性の目標値に達した。ネットワークアナライザを組み込んだバッチ型およびフロー型オプトQCM装置を試作した。いずれの型式においても、必要とされるタンパク質量は、10ng以下であり、目標値に到達した。
(2)金表面での異常反射(AR)を利用した測定法の確立
青色LED光源の電圧安定化等によりΔRノイズの目標を達成した。金表面の層状修飾により反射率変化を6倍向上させることに成功し、50kDa以上のタンパク質、DNA鎖、低分子化合物の吸着も十分に検出できるΔR測定法を確立した。
(3)QCM装置へのAR装置の組み込み
 AR測定装置を組み込んだQCM装置のバッチ型およびフロー型の試作機を作製し、QCMのΔFノイズ:±1Hz以下、ARのΔRノイズ:±1%以下の感度を達成した。さらに、製品化に向け、第2次試作機を作製し、タンパク質やDNA鎖の吸着挙動を測定し、それらの粘弾性を高感度で検出できることを確認した。
V.評価
 生体高分子の相互作用測定装置として実績を上げてきたQCM法を応用し、液相中でのタンパク質やDNA鎖の柔らかさ、水和、コンフォメーション変化、酵素反応などの生化学反応を測定できる装置として、バッチ型とフロー型の2種の試作機を作製した。試作機の作製は当初の開発目標を達成し、すでに商品化も展望できている。
この装置に適用する標準試料を開発し、これらを用い、測定値と生体高分子の分子反応過程や、物性量とをむすびつける理論の検証を行い、開発を着実に推進すべきである。[A]


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