チームリーダー : |
長澤 親生【首都大学東京大学院 システムデザイン研究科 教授】 |
中核機関 : |
首都大学東京 |
参画機関 : |
英弘精機(株) |
- T.開発の概要
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大気中の二酸化炭素(CO2)は最も重要な温暖化気体であり、地球温暖化の進行を測定し、その対策を考える上で、その分布と時間変化の実態を十分に把握することが重要である。このためには、大気中のCO2濃度の空間分布を高頻度・広域・高精度で測定する必要があるが、直接的な測定については、現状では地上観測がほとんどであり、高度分布の測定が極めて不足している。レーザー光を用いた能動的な観測手法であるライダーは、地上からの遠隔測定で大気中の微量成分や気象要素の鉛直分布を測定することが可能である。本開発では、地球温暖化予測研究を推進するため、これまで実現が困難であったCO2濃度、風向・風速、気温の鉛直分布を同時に観測可能なライダー技術の開発を行う。
- U.中間評価における評価項目
- (1)送信系/受信系の開発
- 波長幅が非常に狭いCO2の吸収線にレーザーの発振波長を同調し、精度の高いデータを取得するために、送信レーザーの高出力化を図った。OPO(光パラメトリック発振器)に用いている結晶の耐久性の問題から、目標としたパルスエネルギー、平均パワーを得るには至らなかったが、OPOの発振方式を変更することで解消する見通しが立った。受信系については、狭帯域フィルター等の構成部品につき市販品の性能調査を行い、本プロトタイプ機に用いるべき受信器の性能(仕様)を確定した。得られた仕様をもとに狭帯域フィルターや光電子増倍管などの製作を外注した。
- (2)システムインテグレーション
- プロトタイプ機の開発に先立ち、中核機関の既存施設を利用して、実験室からレーザーを打ち上げ、データを取得するシステムを構築した。このシステム構築に当たり解析アルゴリズム(繰り返しアルゴリズム)を新規に開発した。
- (3)測定精度の検証
- 既存の地上CO2、温度、風測定装置でどの程度の精度が出ているか、実際に地上CO2測定装置を使用してデータを取得し、今後プロトタイプ機で取得すべきデータ精度との比較のため測定精度一覧表を作成した。また、精度を向上させるための校正装置の設置場所につき検討した。
- (4)その他
- 当初予定を前倒しし、上記したシステムを用いて、風速の測定を行い、既存の風速計との比較検証を行った。本システムでのデータ取得原理を確認したが、さらに精度を向上させる必要がある。
- V.評価
- CO2の濃度だけでなく、気温、風向、風速の鉛直分布を一台で測定することができるライダー装置の開発を目標としている。先行した研究による既存設備を利用して、プロトタイプ機を検討するためのシステム構築、測定のアルゴリズムは完成しているが、送信レーザーの出力向上に時間を要しており、開発に遅れが見られる。プロトタイプ機は実験室外での測定、自動車に搭載してからの測定が予定されており、光学系の調整、装置全体の除振などの問題の発生が予想され、もう一段の努力が必要であると考えられる。今後はレーザー出力等の要素技術問題を早急に解消し、プロトタイプ機開発に取りかかり、車載型でもデータが取得できることを示していくことが望まれる。これらの問題点を踏まえ、今後、効率的・効果的に開発を推進すべきである [B]。
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