資料４　開発課題名「生細胞活性可視化診断用ラマン分光顕微鏡の開発」

チームリーダー　：	濵口　宏夫【東京大学大学院　理学系研究科　教授】
中核機関　：	東京大学
参画機関　：	富士フイルム（株）学習院大学大阪大学サントリー（株）花王（株）

Ⅰ．開発の概要: 　単一生細胞の活性を、ｉｎ　ｖｉｖｏ 、非侵襲、リアルタイムで定量的に計測するためのラマン分光顕微鏡を開発する。細胞の代謝活性を鋭敏に反映することから「生命のラマン分光指標」と名付けた波数１６０２ｃｍ^－１のラマンバンドを指標として用い、そのラマンイメージを取得することにより、細胞の活性を可視化診断する新しい方法論と装置を開発する。

Ⅱ．中間評価における評価項目: （１）自発ラマン分光顕微鏡の開発; 　最適にカスタマイズした正倒立型の顕微鏡を導入し、波長可変音響光学バンドパスフィルター、電子増倍型ＣＣＤカメラを組み合わせた自発ラマン分光顕微鏡を構築した。この装置を用いて、酵母細胞の分裂過程を波数２９００ｃｍ^－１におけるラマンイメージとして1秒以下の露光時間で観察可能にした。; （２）多波長ＣＡＲＳ分光顕微鏡の開発; 　近赤外（１０６４ｎｍ）ピコ秒レーザー発振器、波長可変光パラメトリック発振器、フォトニック結晶ファイバー（ＰＣＦ）を光源として用いた多波長ＣＡＲＳ分光顕微鏡の作製が進行中である。ＰＣＦを用いた白色光発生を行い、分光光源として利用可能であることを示した。また、サブナノ秒マイクロチップレーザーを用い、出芽酵母生細胞のＣＡＲＳ分光イメージングを行い、１６０２ｃｍ^－１のラマンバンドを用いて、１０秒のオーダーで生細胞を可視化できることを示した。; （３）多焦点ＣＡＲＳ顕微鏡の開発; 　既存の多焦点ＣＡＲＳ顕微鏡を高度化し、リポソーム及び生細胞の高速ＣＡＲＳイメージングを可能とした。; （４）その他; 　グルコースまたはアミノ酸の同位体置換を施した培地で培養した酵母細胞のミトコンドリアの測定により、「生命のラマン分光指標」の同位体置換に関する情報を得て、ミトコンドリア中で電子伝達を担うユビキノンの一電子還元種（セミユビキノン）がこの指標を与える分子種の有力な候補であることを見出した。

Ⅲ．評価: 　通常のラマン分光法、およびＣＡＲＳ法の２通りのラマン分光顕微鏡を開発し、生きた細胞の状態変化を分子レベルで観測できる装置開発を目指している。機器開発は順調に進捗し、中間評価時に達成すべき目標は全て達成している。今後は、チームリーダーらが見出した「生命のラマン分光指標」を与える分子種の特定を行った上で、開発する機器の有用性を示し、開発機のユーザーとなる生命科学研究者との意見交換、チームへの参画を検討し、開発を着実に推進すべきである。[Ａ]

開発課題名「生細胞活性可視化診断用ラマン分光顕微鏡の開発」

（平成２０年度採択：機器開発プログラム【一般領域】非侵襲的バイオ計測・イメージング手法による生体内単一細胞の応答情報計測）