資料4

開発課題名「高アスペクト比X線格子を用いた位相型高感度X線医用診断機器の開発」

(平成19年度採択:機器開発プログラム【一般領域】人体内の臓器、病態、脳の高次機能などの無・低侵襲リアルタイム高解像度3次元観察、及び人体中の物質の無・低侵襲定量分析)

チームリーダー :  百生 敦【東京大学大学院 新領域創成科学研究科 准教授】
中核機関 :  東京大学
参画機関 :  コニカミノルタエムジー(株)
兵庫県立大学
T.開発の概要
 コンパクトなX線源を用いて構成する実用型高感度X線撮像装置を、X線吸収格子を用いるX線Talbot−Lau干渉法に基づいて開発する。X線位相情報によりコントラストを生成し、従来X線画像を大幅に凌駕する画像を身近に提供する。これにより、リウマチなどの関節疾患や、乳癌が従来にない精度と信頼性で診断できる医用画像診断装置の実用化につなげることができる。また、非破壊検査装置や荷物検査装置など、他のX線画像分野への広範な波及効果を狙う。
U.中間評価における評価項目
(1)Talbot−Lau干渉計シミュレータの開発
 マルチスリット、位相格子等の任意の仕様と配置を条件指定し、撮影画像の状態を光量子ノイズ、検出器ノイズを考慮して予測するシミュレータを開発している。シミュレーション結果は実験結果とよく一致し、シミュレーション上でも装置仕様検討を可能とした。
(2)リウマチ診断用試作機の開発
 軟骨組織等の観察において問題となる欠陥がない5cm角の実効視野を達成し、関節液中の軟骨観察を模擬するため、水中の鶏手羽軟骨について、X線量を変えた撮影を実施し、3mGy以上の線量で軟骨の輪郭が明瞭に観察・識別できることを確認している。
(3)X線格子製作
 UV方式によりX線マスクを行うため、カーボン基板をメンブレンとして使用する新たな方式での仕様を決定しており、面積10cm角のマスクを作製した。また、ICP法では面積6cm角でUV法を上回るピッチ精度、均一性が得られた。X線吸収格子については、4インチシリコン基板を使用して、有効面積6cm角の格子を作製した。ピッチ精度0.3μmの範囲で作製できており、X線Talbot干渉計によるピッチ相対誤差は0.5nm程度である。
(4)マルチラインX線源の開発
 タングステン、並びにモリブデンのターゲットを作製した。ターゲット表面に幅200μmの溝を周期300μmで形成、X線の取り出し角度から実質周期は30μmとなった。また、連続運転時の出力は当初10kwを目標としたが、ターゲットの負荷(寿命)を考慮し5.4kWとしている。ターゲットの寿命をさらに延ばす場合、1.8kWでも通常X線源を用いる場合と同様に、40秒程度の露光時間で位相イメージングを可能としている。
V.評価
 医療画像形成に応用可能なX線位相コントラスト撮像法としての、X線Talbot−Lau干渉計による位相イメージング機器の開発である。本開発では高アスペクト比の回折格子の作製が成否の鍵を握っている。開発は順調に進捗しており、6cm×6cmのX線吸収格子が得られている。これを用い、従来の透過X線法では不可能であった鶏軟骨の可視化に成功するなど大きな成果を上げており、今後の進展が期待される。今後は、医療機器メーカー、医療機関など将来のユーザーの協力を得てデータを蓄積し、本装置の実用化に向けて開発を積極的に推進すべきである[S]。


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