資料4

開発課題名「高精度高分解能荷電粒子撮像素子の開発」

(要素技術プログラム)

開発実施期間 平成18年10月〜平成21年3月

チームリーダー :  圦本 尚義 【北海道大学 大学院理学研究院 教授】
中核機関 :  北海道大学
参画機関 :  ---
T.開発の概要
 荷電粒子を高精度・高分解能で2次元検出する技術はイオン顕微鏡や電子顕微鏡において必要不可欠であり、また、質量分析、電子線分光・回折においても有用である。本開発では分光・投影した荷電粒子の2次元イメージを空間分解能10μmで検出できる半導体素子を開発する。この半導体検出器は2次電子放出の原理を利用し分解能あたり数10万個分までの荷電粒子を電荷として蓄積する。この蓄積電荷を統計誤差の定量性で読み出す技術も確立する。
U.事後評価における評価項目
(1)開発素子SCAPS-Uの試作・評価
 ピクセルサイズ 7μm、総画素数25万画素、非破壊読み出し機能を搭載した荷電粒子撮像素子SCAPS-Uを試作し、既開発のSCAPS-Tに比べて1.6〜2倍の高感度化に成功。読み出ししノイズ低減のために多重サンプリングによる積分演算機能を持つ回路を読み出し部に搭載し、ノイズ低減を確認した。
(2)開発素子SCAPS-Vの設計・試作・評価
 0.25μmCMOSプロセスによりピクセル構造3Tr Pmos APS with Metal 5 電極 + Conditional Reset Tr を持ち、ピクセルサイズ7μm、ピクセル配列504 (H) × 504 (V)、上下2系統カラム読み出し機能を有した素子を設計・試作した。性能評価を行い、撮像分解能7μm、撮像部開口率65%、ピクセル数504x504、フレーム読みだし速度10Hz、読み出しノイズ4.5電子。電子電圧変換ゲイン40μV/e-の目標性能を持つことを確認した。
(3)開発素子SCAPS-V用真空チャンバーの開発
 超高真空対応標準フランジICF203を採用したチャンバーを設計し作製した。素子の暗電流を抑制するため液体窒素による冷却機構を装備し、実使用条件下で-100℃までの冷却を可能とした。高速駆動のために素子と電子回路間の配線距離を小さくするため、素子のパッケージのピンピッチに対応したセラミックハーメチックシールを独自に開発し素子と駆動回路を最短距離で連結する事に成功した。
V.評価
 2次電子放出の原理を利用した半導体検出器を独自の手法により開発・試作を行った。主にMCPを検出器とするイオン顕微鏡等の新たな検出器としての撮像素子として広く使用されることが期待される。
 要素技術の開発は一度の試作失敗を除いて順調に達成され、開発素子の設計、試作、信号読みだし技術を確立し、ほぼ全ての数値目標を達成した。しかしながら、汎用のMCPをはじめ他の検出器と置き換わるためには、製作コストをはじめ感度向上に向けた更なる性能改善が必要と思われる。またノイズ低減が今後の課題であるが、解決には困難が予想され、優れた撮像素子の設計・試作メーカーとのパートナーシップを確立し、さらなる努力が期待される。
 本開発は、ほとんどの数値目標は達成したが、従来の検出器の性能を凌駕するまでには至らず、計測分析技術・手法の開発という本事業の趣旨に相応しい成果が得られなかったと評価する[B]。


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