資料4

開発課題名「単原子実用電子源の開発」

(要素技術プログラム)

開発実施期間 平成18年10月〜平成21年3月

チームリーダー :  大島 忠平 【早稲田大学 理工学術院 教授】
中核機関 :  早稲田大学
参画機関 :  電気化学工業(株)、(株)アプコ、(株)ホロン
T.開発の概要
 従来の電界電子放出電子銃に比較して、2桁以上の輝度をもち、2桁以上の空間的可干渉性が向上した、実用に供する寿命をもつ単原子電子源を開発する。タングステン<111>表面にナノピラミッドを作成し、この先端原子から高指向性、高輝度の電子ビームを放出させる。高いビーム性能実現のため、電子源の取り付け精度を1桁向上させ、各種雑音(振動、電気、磁場)を低減する。
U.事後評価における評価項目
(1)単原子電子源の使用最適条件の解明
 真空蒸着法で作製したPd/W電子源から全電流20nAを1時間安定に放出できることを確認できた。10nAの場合は下記の如く、より長い寿命を記録した。フラッシュ加熱を10〜20時間ごとに行うことで、真空蒸着法で製作した電子源の寿命は110、250、190、120、150、550時間を記録した。寿命後、貴金属を再度真空蒸着しなおすことで、元の状態に戻り、寿命はさらに伸びる。再蒸着は6回繰り返しても、同様な放出特性となることを確認した。
(2)タングステン単結晶の切り出し・取りつけ・加工技術の確立
 電子源の取り付け段階で、0.2°の精度でタングステン結晶方位が調整可能となり、さらに電子銃に組み上げたのち2段4軸調整機構を使って真空外から0.1°の精度で調整可能となった。
(3)パーマロイ真空容器の開発
 パ−マロイブロックからの切り出しと、表面処理および強い真空ベーキングにより、10-9Paのパーマロイ極高真空容器を実現し、真空壁材料としてパ−マロイ材に問題ないことを実証した。パ-マロイとステンレス間の溶接容器の真空溶接技術も確立した。
V.評価
 従来法による単原子電子源の課題である寿命の短さという課題を解決するため、貴金属を先端付近に供給する新たな機構を構築し、桁違いに高いコヒーレンスを有する単原子電子ビームを開発した。今回の技術開発の結果、理想的な電子顕微鏡用電子銃としての実用化が強く期待される。
 要素技術の開発は順調に達成され、とりわけ新しい単原子電子銃を作製すると共に、極高真空用パーマロイ材を開発した点は高く評価される。今後は、現在実施中の走査型電顕への搭載のみならず、透過型電顕および走査透過型電顕への搭載を具体的に進め、民間企業との連携による開発成果の実用化に向けた取り組みを引き続き実施することが期待される。
 本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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