資料4

開発課題名「可搬型環境分析用アスベスト高感度X線回折装置の開発」

(機器開発プログラム:領域非特定型)

開発実施期間 平成18年10月〜平成20年9月

チームリーダー :  中村 利廣 【明治大学 理工学部 教授】
中核機関 :  明治大学
参画機関 :  (株)リガク
T.開発の概要
 現場において、アスベスト等の含有量を正確に分析できる装置のニーズが高くなっているが、本開発では、0.1〜0.3 質量%程度の極微量アスベストの検出を可能とし、しかも100V 電源と水道水による冷却で動作し、車載が可能で、さらに簡易な試料前処理でも分析できるX線回折装置の開発を行う。さらに、この測定に必要な標準物質及び試料前処理方法の開発も併せて行う。本開発により、ナノレベルの汚染物質等の定量へも波及が期待できる。
U.事後評価における評価項目
(1)X線回折装置(感度)について
 要素技術開発として、最大出力600W(40kV-15mA)の高圧電源を製作、高輝度X線管球の高角度取出による強度アップ、ゴニオメータ・光学系の小型化による強度アップ、検出器の最適化及び多次元化による強度アップについて各々の開発目標を達成し、従来機の約10倍のX線強度を持つ小型装置を開発した。
(2)X線回折装置(仕様)について
 各要素部品の小型化、軽量化を行い、装置寸法:W600×D400×H700mm、本体乾燥重量68kg、電源設備:単相AC90〜264V、15Aのマルチ入力対応、水道水直接冷却もしくは、専用小型循環送水装置の両対応の装置を開発した。また、安全対策としてインターロック式試料室開閉扉(扉Open時は、X線がOFFになる)を具備している。
(3)試料前処理法、並びに標準物質の開発について
 試料前処理法については、粉砕方法について検討し、試料に対する圧縮が小さい方法がクリソタイルの結晶構造を壊さずに再現性が良い結果を与えることを明らかにした。クリソタイルアスベスト粉末から不純物の除去についても、塩酸と蟻酸による処理が効果的であることを見出した。クリソタイル含有濃度が高いパーライト耐熱板(クリソタイル約26%)を原料に粉砕・混合・粉末化したものについて均質性の評価を行い十分均質な粉末ができることが判明した。
V.評価
 本開発は社会的なニーズの高いアスベストの分析というテーマであり、開発目標も明確である。参画機関によって開発されたX線回折装置は当初の目標を超えた性能を持つと高く評価できる。反面、アスベスト標準試料の作製という困難な課題に取り組んだが、十分成果をあげたとは言い難い。アスベスト分析は潜在的に極めて重要な問題であると考えられ、今後確実な成果をあげることを期待する。
 本開発は、装置開発において当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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