資料4

開発課題名「誘導パラメトリック蛍光顕微法」

(要素技術プログラム)

開発実施期間 平成17年10月〜平成21年3月

チームリーダー :  伊東 一良 【大阪大学 大学院工学研究科 教授】
中核機関 :  大阪大学
参画機関 :  ---
T.開発の概要
 ふたつの超短光パルスを試料に集光し、パラメトリック発光を検出する誘導パラメトリック発光顕微法を開発する。広帯域ポンプ光による誘導パラメトリック発光分光映像法を開発し、DNA、タンパク質などの生体分子に適用できる分析技術を確立する。本技術によりタンパク質分子間の相互作用解析や生体物質の無染色イメージングが可能となり、バイオテクノロジー分野の研究、創薬分野の基礎研究等への利用が期待される。
U.事後評価における評価項目
(1)高速走査技術の確立
 無染色試料の3次元的な動きを捉えることを目的として、高速走査型の誘導パラメトリック発光(SPE)顕微鏡を開発し、10μm平方の面積を5ms以内,10μm立方の空間を50ms以内で走査し、像を取得することに成功した。熱変性の牛血清アルブミン(無染色タンパク質)で測定した信号対雑音比も目標値をクリヤーした。
(2)広帯域計測技術の確立
 広帯域ポンプ型では、帯域100nmのSPE信号を得て、スペクトルを3分割することで染色試料のSPEスペクトル識別に成功した。超広帯域3バンド型では、380、560、775nmのポンプ光を使用し、3チャンネルを切り替えながら測定可能とした。広帯域型におけるビーズ観察では、ポンプパワー5mW、ダンプパワー1.5mW、信号対雑音比122、水平分解能0.51μmを達成した。これらの値は数値目標をすべて達成している。
(3)誘導ラマン散乱型の開発
 当初の目的以外の成果として、誘導ラマン(SRS)型顕微鏡の着想・開発に成功した。SRSは所望の分子振動周波数を有する分子によって生ずる励起光強度変化であり、これは分子振動共鳴のみを反映し、非共鳴な光学過程の影響を受けない。したがって、SRSを用いることにより、生体の水からの信号発生を抑えて、極めて高コントラストかつ高感度に、無染色生体を観察することが可能になった。
V.評価
 誘導パラメトリック発光という、これまで顕微鏡に応用されてこなかった新しい物理現象を利用し、高感度で高機能な顕微鏡の開発を進めた。将来、世界トップクラスの性能を有する顕微鏡として生物学や医学領域で広く使用されることが期待される。
 要素技術の開発は順調に達成され、高速走査技術および広域計測技術を確立し、すべての数値目標を達成した。更に、誘導ラマン散乱(SRS)型の着想を得て、その開発を進めた結果、SRS型が高い分子識別能と高感度性、高コントラスト性を併せ持つ、極めて強力な顕微鏡方式であることを実証した。今後は、戦略的な知的財産の形成および有用な応用分野の探索に向けた努力が期待される。
 本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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