資料4

開発課題名「高感度・高密度バイオ光受容素子」

(要素技術プログラム)

開発実施期間 平成17年10月〜平成21年3月

チームリーダー :  井上 康則 【東京理科大学 理工学部 教授】
中核機関 :  東京理科大学
参画機関 :  東京大学大学院、名古屋大学大学院、東京工業大学・資源化学研究所、(独)産業技術総合研究所
T.開発の概要
 耐熱性ラン色細菌の光受容生体コンポーネント(PSI)を光電変換部に用いた高感度・高密度のバイオ光受容素子を開発する。ラン色細菌から熱安定性が高く、高感度のPSIを単離し、分子ワイヤー、金ナノ粒子、ナノゲート電界効果トランジスタと連結した超高感度のフォトンカウンティング素子を開発する。1個のフォトンで1個の電子が生じ、この電子を受容した金ナノ粒子の電気化学的ポテンシャルがデジタルに変化することを利用して、室温で単光子を検出する。
U.事後評価における評価項目
(1)超高感度(光電変換収率、60%以上)を室温で実現
 電子還元によりディスクリートに電位の変化を示す、微小でかつ粒状径のそろった金ナノ粒子の作成には成功した。また、水溶液中での電子の漏れを防ぐため、界面活性剤でコートすることが有効であることもみいだした。室温でフォトンを検出する可能性を見いだすことはできたが、微小ゲートに金粒子付きPSIを少数固定するすべてを組み合わせた実験までには到らず、この点で当初の目標をクリアできなかった。
 FETの接合容量の影響を大幅に低減するソース・ドレイン・フォロワー回路方式をとり、面積が小さくなるCMOS集積回路を設計し、PSIとの融合動作を確認した。CMOS集積回路の微細化は充分ではないが、FETの接合容量を実質的に微小化し、当初の目的はクリアできた。
(2)画素サイズの超微小化(100nm平方以下)
 500nm径の金電極が電極として作動する事を確認できた。また、0.18μmルールでCMOSアレイ試作を行い、300nmのFETゲート電極による回路動作を確認した。
(3)高い熱安定性
 好熱性藍色細菌Thermosynechococcus elongatusは65℃まで活性は変化せず、室温で1年近く活性を維持でき、バイオ素子としては出色の熱安定性である。
V.評価
 バイオ系の材料を効果的に用いて素子アレイ化した点で先駆的な要素技術としては評価できる。CCD、CMOSなどの画像素子と比べて素子内均一性、素子間再現性、ダイナミックリニアリティの点で懸念される。
 本開発は、当初の開発目標の基本特性は得られたが、本事業の趣旨に相応しい成果が得られなかったと評価する[B]。


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