チームリーダー : |
長 康雄 【東北大学 電気通信研究所 教授】 |
中核機関 : |
東北大学 |
参画機関 : |
エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)、富士通(株)
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- T.開発の概要
- 静電容量変化に対する高い感度とサブナノメータの空間分解能を持ち、線形・非線形誘電率の分布が計測可能な走査型非線形誘電率顕微鏡(SNDM)法を発展させ、従来にない高機能複合型SNDMシステムを開発する。この開発により、誘電材料中の分極、半導体中の電荷および高分子の誘電特性とそれらに固定された電荷などが世界最高の性能で可視化できるようになり、種々の材料・素子の評価・分析に大きく貢献する。
- U.事後評価における評価項目
- (1)SNDM検出感度向上について
- 要素技術開発により得られたプローブの最高感度は3.8×10-23Fであり、当初目標を達成した。本プローブを超高真空チャンバー中で動作させ、静電容量計測を行ったところ、分解能0.1nm以下となり、Si(111)面7×7構造など原子分解能での可視化に成功した。
- (2)高機能複合型SNDMプロトタイプ機について
- 各要素技術開発を取り入れた誘電測定の集大成の装置として高機能複合型SNDMを完成させた。開発目標として、検出感度は現製品の100倍以上である7.6×10-22Fを達成し、導電性カーボンナノチューブ探針を用いた高分解能測定も達成した。さらに3次元分極マッピング及び誘電率の定量計測に成功している。
- (3)サンプル作成手法及びアタッチメントの製作について
- 固定電荷の可視化については、観察用の試料作製手段として機械研磨方式を確立し、世界で初めてMONOS型Flashメモリの固定電荷の視覚化に成功した。ドーパントプロファイル計測については、試料作製に機械研磨方法に加えて@トランジスタ試料作製用のイオン研磨方法を確立し更にA測定前処理方法を確立し、実デバイスのドーパント濃度プロファイルの定量計測技術を確立した。
- V.評価
- 本装置は、分解能が原子識別能を持つ原子間力顕微鏡に類似していると考えられるが、本開発によりフラッシュメモリの蓄積電荷の測定を行うことが可能となった。試料表面を研磨により露出させて測定する形式ではあるが、高い空間分解能での測定に成功しており、科学研究の側面からは高く評価できる成果を得ている。一方で、開発した装置の完成度は高いと言えるが、今後の製品化に至る戦略が不透明である。今後、企業により、優れた性能を有する日本発の製品として本開発成果の早期の商品化を強く期待したい。
- 本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。
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