資料4

開発課題名「光導波路素子を用いた高性能中赤外分光計測」

(平成19年度採択:要素技術プログラム【一般領域】)

チームリーダー :  佐々田 博之 【慶應義塾大学 理工学部物理学科 教授】
中核機関 :  慶應義塾大学
参画機関 :  東京工業大学
T.開発の概要
 気体試料中の微量分子成分を同定し定量測定するためには中赤外領域の分光計測が有効である。しかし、この波長域には使いやすい分光用コヒーレント光源が少なかったのが現状で、2004年近赤外光を中赤外光に高効率で変換する光導波路型非線形光学素子が我が国で開発されている。本プロジェクトでは、この新しい素子と、光共振器吸収セル、半導体レーザー、光ファイバーを組み合わせて、広い同調波長域、高分解能、高感度を併せ持ち、高精度、高速な計測が可能で、しかもコンパクトな赤外分光計を試作し評価する。
U.中間評価における評価項目
(1)差周波光源の性能評価
 ピグテイル付導波路型PPLN(周期分極反転構造ニオブ酸リチウム)については、導波路型PPLNの性能が高く、目標を大きく上回る出力を得ることができた。このため、遷移双極子モーメントの大きな遷移では光共振器を使うことなく飽和吸収スペクトルを観測することができるようになった。半導体レーザー光源についても、レーザー電源とレーザー温度制御回路に現れるラインノイズを減らすことによりメタンの飽和吸収スペクトルの線幅が300kHzで観測され、光源のスペクトル線幅は少なくとも200kHz以下であることが示された。
(2)光共振器吸収セルの性能評価
 窓なし光共振器吸収セルは、共振周波数を光源の周波数に安定化させてメタンの飽和吸収スペクトルを観測した。その結果得られたスペクトル幅は300kHzであった。一方、窓付き光共振器吸収セルでは、光共振器の透過光に現れるフリンジの半値幅とFree Spectral Rangeを測定すると(ミラーの反射率)−(窓の透過損失)が得られる。窓なし光共振器の結果と併せて、ミラーの反射率が98.9%、窓の透過損失が0.15%であることがわかった。さらに同じセルでメタンの飽和吸収スペクトルがスペクトル幅300kHzで観測された。
V.評価
 差周波光源の開発について、ドップラー分解能分光用光源では、当初計画していたDFB(分布帰還型)半導体レーザーを使用したが、光アイソレーターを内蔵していなかったため周波数掃引が上手くいかなかった。しかし、外部共振器型半導体レーザーの導入により開発目標を達成している。一方、サブ−ドップラー分光用光源は当初計画通りの成果を得ている。窓無し、窓付き光共振器吸収セルも開発目標を上回っている。
 開発は順調に進行しており、当初目標に掲げた成果は達成できると期待される。今後は、開発技術の応用面に注力しつつ、着実に推進すべきである[A]。


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