資料4

開発課題名「超高密度ハードディスク実現のためのナノ潤滑計測技術」

(平成19年度採択:要素技術プログラム【応用領域】)

チームリーダー :  福澤 健二 【名古屋大学 大学院工学研究科 教授】
中核機関 :  名古屋大学
参画機関 :  ---
T.開発の概要
 次世代ハードディスクドライブの実現には、従来の空気浮上型から接触走行型へと潤滑技術におけるパラダイムシフトが求められ、従来無視できた潤滑膜の影響の解明が必須となっている。ハードディスクドライブ用潤滑技術のブレークスルーをもたらすナノ潤滑現象計測技術を確立することを目的とする。
 本開発では、水平力測定、鉛直力測定、膜分布観測の性能向上、さらに三つの測定法の統合を試みる。また、すき間制御の精度向上に重要な接触点検出を確立する。
U.中間評価における評価項目
(1)接触点検出
共振成分および加振成分検出法の原理確認
 共振成分検出法は、低速摺動時において検出精度約0.15nmが可能であったが、高速摺動時では十分な信号強度が得られず、固体接触点検出法としては有効でないことを見いだした。これに対して、加振成分検出法は高速摺動時において検出精度約0.1nmが実現できることを確認した。
(2)水平力測定
  • 高速摺動系の基本構成の確立:変位測定法を新たに開発した。この新規測定法を用いて摺動時の水平力測定系を構築し、磁気ディスク上の厚さ約10nm潤滑膜を最大摺動速度0.31m/sで摺動した場合のプローブの振動振幅変化、位相変化を測定することに成功し高速摺動系の基本構成の確立を達成した。
  • 摺動時の温度測定系の構築:赤外線カメラを用いた観測系を構築し摺動時のプローブ・ディスク接触点付近の温度分布観測を可能とした。
(3)鉛直力測定
  • 測定感度の向上:鉛直力センサの構造をてこ形とすること、および検出法を振動検出から位相検出することにより力測定感度約21nNを達成した。
  • プローブ一体型鉛直力センサの構築:高速摺動時において鉛直力センサに誘起される鉛直方向のすきま変動を約0.1nmに抑制することに成功し、プローブ一体型鉛直力センサ構築を実現した。
(4)膜分布の動的観測
  • 動的観測系の基本構成の確立:視野の狭小化の課題を新規に考案した2段結像系により解決し、画像取得速度10枚/秒での膜分布の動画像の取得を可能とした。
  • 摺動プローブ観測系の構築:厚さ9nmの潤滑膜について摺動時の潤滑膜分布観測を可能とした。
(5)測定法の統合(前倒し項目)
 計画を前倒しで進め、翌年度の開発項目である各測定法の統合の一環として開発したプローブ一体型センサを用いて低速摺動条件において、接触点、水平力、鉛直力の同時測定を可能とした。
V.評価
 ナノメートルレベルの潤滑現象の計測を精密に行うことは学術的な意義が非常に高く、要素技術の確立のためにも重要と考えられる。本開発課題の設定目標が確実に計測できていることをプローブの動作状況等をナノメートル・オーダーで実測し、立証しておくことが必要である。
 ただし、ナノメートル・オーダーにおける計測では、精密な設計図の作成による測定原理の検証とプローブの動作予測、精度の高い計測法の採用、清浄で外部からの擾乱を極力排した環境での計測等、考慮すべき点が多いと思われる。「ナノメートル膜の潤滑」を精密に計測し、これを立証しつつ、効率的、効果的に開発を進めるべきである[B]。


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