資料4

開発課題名「文化財保全環境モニター開発 ―土壌由来のカビの検出」

(平成19年度採択:機器開発プログラム
【応用領域】リアルタイム・ハイスループット観察、リアルタイム制御、
又はものづくり環境適応可能な計測分析システム)

チームリーダー :  鈴木 孝仁 【奈良女子大学 理学部 教授】
中核機関 :  奈良女子大学
参画機関 :  株式会社 ソダ工業
近畿大学
株式会社 エックスレイプレシジョン
新日本電工 株式会社
T.開発の概要
 カビによる文化財の劣化や損傷を防止するためには、カビの発生を早期に検出できる先端機器の開発が急務である。カビをはじめとする微生物は、特有の臭い成分を分泌することに注目して、イオンモービリテイスペクトロメトリー(IMS)を原理とする先端計測分析機器を開発し、これら臭い成分を文化財の置かれた土壌などの環境でリアルタイムに検出し、文化財保全環境モニターの実用化を目標とする。
U.中間評価における評価項目
(1)IMS技術を利用した環境モニター装置の、試作機プロトタイプ機の製作
 基本設計図を完成し、プロトタイプ機を製作した。プロトタイプ機にて、3-メチル-1-ブタノールのIMスペクトルの検出(1〜0.1ppmで検出可能)、1-オクテン-3-オールのIMスペクトルの検出(0.1〜0.01ppmで検出可能)、ジェオスミンのIMスペクトルの測定を行った。
(2)フィンガープリントデータベース構築
 GC/MSの測定データを用いて真菌の2属(アスペルギルス属とペニシリウム属)から発生する揮発性成分(MVOCs)の主たる成分の分子のフィンガープリントを構築した。開発したプロトタイプ機を利用し、各種の土壌由来MVOCsを分離した。
V.評価
 イオンモービリテイスペクトロメトリー法による、小型で、屋外長時間駆動が可能な文化財保全モニターの開発は、目視の不可能な段階でのカビの検知を可能とし、世界初の装置として我が国の重要な課題である文化財保護へ貢献することが期待される。
 開発は所期の計画に沿って順調に進行しており、装置のイオン源について更なる検討の必要があるものの、当初目標に掲げた成果は達成できると思われる。また、カビの生態に関する学問的な知見も蓄積されつつある。今後は文化財に適用する際の安全性や屋外での長時間使用時の耐久性の確保を念頭に置きつつ、着実に推進すべきである。[A]


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