資料4

開発課題名「タンパク質および核酸の超高感度シグナル検出試薬」

(平成19年度採択:要素技術プログラム【一般領域】)

チームリーダー :  伊藤 悦朗 【徳島文理大学 香川薬学部 教授】
中核機関 :  徳島文理大学
参画機関 :  北海道大学
株式会社 ビーエル
T.開発の概要
 タンパク質および核酸の高感度検出法として、当該チームはこれまで独自に「酵素サイクリング免疫測定法」を開発している。本プロジェクトでは、酵素免疫法において汎用的に使用されているアルカリホスファターゼなどを抗体標識酵素として、それにより脱リン酸化された基質を酵素サイクリング法で増幅し、その結果、シグナル強度を増幅させる「超高感度シグナル検出試薬」を開発する。
U.中間評価における評価項目
(1)標識酵素及び標識抗体の作製条件検討
 標識酵素に架橋剤を導入する際の条件の検討及び抗体作製行程ごとの至適条件を検討し、標識抗体を作製した。ALPを抗体に標識する方法につき検討した結果、水溶性の架橋剤を使用し、架橋時に金属塩を共存させることにより、抗体に標識されたALPの失活が抑えられた。また、架橋化されたALPと抗Pumilio F(ab)'の混合比を変えることで数種の異なる標識抗体を得ることができた。得られた標識抗体を用いてPumilioの測定を行ったところ、1.8×10-16moles/wellまで測定できた。
(2)非特異的吸着防止検討
 非特異的吸着を防止するために界面活性剤やブロッキング剤の検討を行った。現状のブランクの大部分がALPの基質のアンドロステロン-3-ホスフェートがサイクリング系に使用している3α-HSDの基質として働いてしまうことに起因しており、標識酵素の非特異的吸着によるものではないことがわかった。ALPの基質にp-ニトロフェニルリン酸を用いて測定するとブランクはほぼゼロとなった。
(3)超高感度検出法の確立
 5β-アンドロステロン-3-ホスフェートを基質とし、ALPとチオNADサイクリング反応の組み合わせにより、1.9μU/well(3.8×10-18moles/wellに相当)のALP活性を測定できた。
(4)モデル系での測定検討
 標準物質(タンパク質)を酵素免疫測定法で測定し、測定感度の確認を行った。これまでの検討により確立された標識酵素と基質の組み合わせをELISAに適用し、標準物質を使用してサンドイッチ法によるPumilioの測定を行った。Pumilioは試料中濃度で0.5ng/mL(1.8×10-16moles/well)まで測定できたが、ブランク値が高く、シグナルとブランクの比が0.15であった。標識酵素の活性をダイレクトに測定した時よりも感度は1/100となったが、実際にタンパク質をチオNADサイクリング応用超高感度酵素免疫測定法で測定できることがわかった。
V.評価
 チオNADサイクリング反応を組み合わせたALP-ELISAによるモデル蛋白質の検出感度は、通常のELISAの100倍に達しており、微量蛋白質測定への応用が期待できる。ALPの基質の選択が、チオNADサイクリング反応のブランク反応ならびに阻害反応を抑えるために非常に重要なポイントであることが明確になった。
開発は順調に進行しており、当初目標に掲げた成果は達成できると期待される。今後は、ALPの最適な基質の開発、非特異的吸着の防止、特異性の高い標識抗体の作製の検討等を行い、超高感度化を達成するべく、着実に推進すべきである。[A]


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