資料4

開発課題名「蛋白質解析用超高感度テラヘルツ波NMR装置」

(平成18年度採択:機器開発プログラム
【開発領域】ハードウェアによる計測限界を突破するためのコンピュータ融合型計測分析システム)

チームリーダー :  藤原 敏道 【大阪大学 蛋白質研究所 教授】
中核機関 :  大阪大学
参画機関 :  日本電子 株式会社
福井大学
T.開発の概要
 テラヘルツ波照射によって低温電子スピンの巨大な分極を利用して蛋白質の超高感度固体NMRスペクトルを得る。この解析に最近の構造プロテオミクス研究で充実してきた蛋白質NMRデータベースと、最新の計算機能で可能となった多スピン系の量子力学計算を利用する。これにより、これまで単結晶X線回折などでの構造決定が難しいアミロイド蛋白質や膜蛋白質複合体の解析を行う。
U.中間評価における評価項目
(1)高磁場DNPによるNMRの感度向上
 周波数固定ジャイロトロン(周波数394.5GHz、出力30W)、テラヘルツ波照射マジック角回転固体NMRプローブ(温度100K、試料回転4kHz)を開発した。溶液NMRの実験でNMR感度の5〜10倍の向上を達成した。
(2)低温マジック角試料回転プローブの製作
 基本設計図を完成し、温度40Kは達成できた。試料回転数の目標は今年度中に達成できる見込である。
(3)ジャイロトロン周波数可変機構の確定
 基本設計図を完成し、可変機構性能として帯域1GHz、出力30Wの目標を年内に達成できる見込である(DNP用ではない別のジャイロトロンでの実績あり)。
(4)DNP数値シミュレーション法の確定
 基本設計としてソースコードを開発し、5スピン系以上、ラジオ波・サブミリ波に関して3チャンネル以上の照射、試料回転効果の考慮、オイラー角による粉末試料の考慮を含む計算性能を目標とした。ソースコードはデバック、改良の余地はあるが、ほぼ完了した。
また、計算性能については、目標を上回る7スピン系以上について達成した。
V.評価
 世界最高の磁場中でのDNP実験に成功して開発は順調に進行しており、当初目標に掲げた成果は達成できると思われる。今後は、蛋白質解析用DNP-NMRトータルシステムの完成に向けて、最適なラジカル試剤、シミュレーションソフトの有用性の評価に留意しつつ、着実に推進すべきである。[A]


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