資料4

開発課題名「ピレン誘導体化による超微量糖ペプチドMALDI-MSn

(平成19年度採択:要素技術プログラム【一般領域】)

チームリーダー :  天野 純子 【財団法人 野口研究所 糖鎖生物学研究室 室長】
中核機関 :  財団法人 野口研究所
参画機関 :  (株)島津製作所
T.開発の概要
 病理切片の生体分子や遊離した糖鎖を同定するMS装置の開発が行われている。当該チームでは遊離糖鎖をピレン標識することで100倍高いシグナル強度が得られる独自の技術を開発している。一方、診断・創薬には、どのタンパク質のどこに結合した糖鎖かを決定することが必須であるが、糖ペプチドのイオン化効率が低く、測定できない。そのため、血清中の超微量タンパク質解析のために測定プレート上で行う前処理方法を開発する。本方法により、夾雑タンパク質存在下、目的糖タンパク質の高感度MSnを実現する。
U.中間評価における評価項目
(1)検出感度の向上
 ピレン標識(イオン化向上)マトリックスを開発し、100fmolにおいて、100mV以上のシグナルを得て、MS3が測定できた。糖鎖・糖ペプチドの詳細な検出限界についてさらに調査中。また、プレートの表面処理において、オンプレートピレン標識後の測定分子であるピレン標識糖は、フェニル基処理表面上でマトリックスとして6-ATTを用いた場合、50%以上のシグナルがプレート上の全測定点の約2%で得られ、局在化・高密度化が実現していることが示された。
(2)分離・分画技術の開発
 プレートの表面処理のうち、夾雑物分離、測定分子濃縮においては、ペプチド1pmol存在下で170fmol糖ペプチドを検出した。
V.評価
 ナノデバイス・ナノ材料の3次元化学結合状態を分析できる硬X線光電子分光装置の開発は、広角度アクセプタンス対物レンズを使用し、収束硬X線を2次元走査することにより、3次元化学状態分析を実現し、高密度集積回路、磁気薄膜電子デバイス等新規ナノ材料の分析装置となることが期待される。
 開発は順調に進行しており、当初目標に掲げた成果は達成できると考えられる。今後は再現性及び定量性の向上を図りマトリックスの結晶化により糖鎖が局在化する機構の解明を望む。また、濃縮プレートの開発は表面処理や塗布乾燥パターンニングの得意なメーカーの協力を得る等、着実に推進すべきである。[A]


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