資料4

開発課題名「生体計測用超高速フーリエ光レーダー顕微鏡」

(機器開発プログラム:領域非特定型)

チームリーダー :  谷田貝 豊彦 【筑波大学 大学院数理物質科学研究科 教授】
中核機関 :  筑波大学
参画機関 :  富士フイルム株式会社
T.開発の概要
 生きたままの生体表層組織の断層画像を実時間で測定する顕微鏡を開発する。生体表層組織からの反射光を基準参照光と干渉させ、そのスペクトルをフーリエ変換することにより、非接触・無侵襲で生体組織の三次元断層画像を高速に取得する装置を開発した。眼球の観察において従来にない評価法を医療現場に提供した。また、皮膚組織の評価にも新局面を拓いた。内視鏡にこの顕微鏡を組み込むことに成功しているので、胃や肺の表層組織の観察も可能である。
U.開発項目
(1)解像力の向上
 SLD広帯域光源の性能を十分に引き出すため、(1) 分光器の再設計(収差の低減)、(2) 波長・各周波数リスケーリングアルゴリズムの再設計を行い、生体組織中で2.5 μm の深さ分解能を得ることに成功した。また、何れの深度においても一定、かつ最適な横方向分解能を得る手法として複素デコンボリューションに基づいた数値手法を開発し、焦点位置で18 μm、焦点深度外で 9 μm の横方向分解能を実現し、当初の目標を上回る解像力を達成した。
(2)測定速度の向上
 (1) システムのノイズ特性の理論化および理論限界までの信号対雑音比の最適化 、(2) プローブパワーの増強による感度の向上を図り、最大 112 dB、typical 107 dB の計測感度を達成した。また、高速カメラ2台並列法で計測時間56,000 A-lines/sec を実現し、また、位相シフト法を導入して深さ方向の計測レンジを拡大すると同時に画像取得速度40.0 Mpix/sを実現し、当初の目標を上回る測定速度を達成した。さらに、高速波長走査光源を用いた装置も開発し、 28,000 A-lines/secを実現した。
V.評価
 生体表層組織からの反射光を標準参照光と干渉させ、そのスペクトルをフーリエ変換することにより、生体組織の三次元断層画像を無侵襲で高速に取得する装置の開発は、とりわけ医療分野における診断技術の高度化に寄与することが期待される。
 機器開発は順調に達成され、開発した6つのタイプの装置の内2つは既に実用化もなされており、優れた基礎研究の成果を元に、産と学が密接に連携し装置開発から市場開拓、事業化戦略に至るまでの見通しを明確に立てている点は高く評価できる。中でも、偏光感受型装置については、眼科、皮膚科などの医療分野での新規診断手法の確立が期待でき、また基礎生命科学分野における新規計測・分析技術としての応用の可能性も持ち、今後の展開が大いに期待される。さらに、この技術は眼科診断法のみならず、眼科手術法への応用による貢献も期待される。また、内視鏡プローブを装着した装置については、日本が世界に比して高い技術的優位性を有していることから、国際競争の観点からも事業化を一層促進すべきである。
 本開発は当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する。S


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