資料4

開発課題名「超高感度質量分析のためのサンプル前処理・導入システムの開発」

(要素技術プログラム)

チームリーダー :  夏目 徹
【独立行政法人産業技術総合研究所 生物情報解析研究センター チームリーダー】
中核機関 :  独立行政法人産業技術総合研究所
参画機関 :  独立行政法人理化学研究所
株式会社テクニスコ
日京テクノス株式会社
T.開発の概要
 最新の質量分析計は10-18モルという超微量のタンパク質を検出することが理論的には可能である。しかし、タンパク質一つ一つが様々な形状・性質を持ち不安定なため、容易に吸着分解・消失してしまい、実際には、超高感度分析を行うことは極めて困難である。この問題を克服し、質量分析によるタンパク質解析の感度を飛躍的に向上させるため、ここ数年急速に進歩した超微細金属成形加工法(精密電鋳)と精密ロボットを組み合わせたサンプル前処理・質量分析導入システムの開発を行う。
U.開発項目
(1)精密電鋳要素技術の開発
 新規な電鋳方法を開発し、目標値を大きく上回る92pLの死容量(デッドボリューム)で流路を作製することに成功した。
(2)微細流路の製作
 上記精密電鋳技術で作製した微細流路を用い、目標値である25nL/minでの送液スピードで、実際の分析が行えるかを、プロトタイプ機を用いて試験した。その結果、下記の無発塵駆動ユニットと注入ユニットと組み合わせることにより、流路として機能することが確認された。
(3)無発塵ロボット技術の導入
 無発塵ロボット駆動部を備えた精密分注システムのプロトタイプを完成させ、プロトタイプ機を用いた試験運用を行い、耐圧性と発塵性を評価した。連続2,000回の分注を目的に合った耐圧性をもって無発塵で行えることが確認できた。さらに、システムの制御ソフトウェアを完成させ実機を用いた試験運用を行ったところ、従来システムと比較して1.5−2倍の高感度化と10倍程度のS/N比向上を実現した。また、目標値を上回る4週間の連続運転も達成した。
V.評価
 超微細金属成形加工法と精密ロボットとを組み合わせ、質量分析の際の計測機器に至るまでの死容量(デッドボリューム)を大幅に減少することにより、微量なサンプルの高感度・ハイスループット分析を可能とする要素技術の開発は、医学・生命科学・バイオテクノロジー産業の分野において極めて大きい波及効果をもたらすものと期待される。
 要素技術の開発は順調に達成され、所期の目標を大幅に超えて、現在の世界水準を凌駕する分析感度とスループットを達成している。開発成果の事業化についても十分な検討がなされており、コスト面での見通しが得られれば広く実用に供されるものと判断され、今後は、開発成果の事業化に向けた取り組みが引き続き期待される。
 本開発は当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する。S


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