資料4

開発課題名「ナノ物体計測のための操作観測技術の開発」

(要素技術プログラム)

チームリーダー :  藤田 博之 【東京大学 生産技術研究所 教授】
中核機関 :  東京大学
参画機関 :  静岡大学
香川大学
T.開発の概要
 単一DNA分子を水中で捕まえ、外部にも取り出せる分子ピンセットをマイクロマシン技術で作製する。pNオーダーの力計測や、DNA分子による塩基認識タンパク質の捕獲と機能評価の技術を開発し、さらに原子間力顕微鏡や透過型電子顕微鏡による観測技術を融合することで、ナノ物体の電気・機械特性を計測するマイクロマシンツールを得る。個々のナノ物質の様々な特性を、物質を見ながら計測できる技術としてナノテクノロジーの研究へ多大なる貢献が期待できる。
U.開発項目
(1)分子ピンセットによる一分子分取技術の実現
 容積25pLの微小チャンバ内で、DNA分子が数個存在する状態を保ちつつ、分子ピンセットに数ミリ秒間電圧を印加することにより、単一分子の伸長・固定が可能であることを示した。また、マイクロ流路の内部で水溶液中に多数存在するDNA分子を単分子に振り分けて、流路内の固定電極に伸長・固定する電気泳動チップを試作した。
(2)DNA分子のAFM観測と計測技術の融合
 分子ピンセット間に捕獲したDNAに対して、ナイフ形状のカンチレバーのプローブを押し当て、スキャンしながら動かすことにより、DNA分子表面のAFM像を取得する方法を開発した。また、カンチレバー形状のアームを持ち、変位センサーを内蔵する力計測機構付き分子ピンセットを開発し、このピンセットから得られるデータを、フーリエ変換を用いてイメージング処理することにより、力計測感度1nNを達成した。
(3)DNA分子によるタンパク質フィッシング技術の開発
 分子ピンセットに伸長・固定したDNA分子に、タンパク質が修飾されることを、AFM観測により実証した。また、DNA溶液とタンパク質溶液の搬送システムおよび低バネ定数分子ピンセットの変位計測システムを試作し、DNA-タンパク質相互作用強度の測定が行える装置のプロトタイプを構築した。
(4)ナノ物質(DNA分子以外)操作観測技術の開発
 アクチン、微小管、ゼラチン、ポリグルタミン酸、HBCナノチューブなど、多数の長鎖分子を、伸長・捕獲できることを実証した。
V.評価
 マイクロマシーニング技術によって作製したDNA捕獲用ナノピンセットの技術に基づく、DNA分子及びそれに結合したタンパク質、カーボンナノチューブ等のナノレベル物質の計測用マイクロマシンツールの開発は、ナノテクノロジー分野への貢献、さらには生体分子計測により医療分野への応用も期待される。
 個々の要素技術は概ね計画に沿って開発され、装置設計および計測技術開発については、ナノテクノロジー分野の技術を確実に進歩させたものと評価できる。しかし、当初の目標であった単一DNA分子の捕獲については未解決な課題が残っており、DNA−タンパク質相互作用の測定システムについては、汎用化に向けたさらなるデータの取得が必要であると考えられる。
 本開発は、計測分析技術・手法の開発という本事業の趣旨に相応しい成果が得られなかったと評価する。B


前のページに戻る