資料4

開発課題名「到来方向測定による高感度ガンマ線3Dカメラの開発」

(機器開発プログラム:領域特定型「実験小動物の生体内の
代謝の個体レベルでの無・低侵襲的解析、可視化」)

チームリーダー :  谷森 達 【京都大学大学院 理学研究科 教授】
中核機関 :  京都大学
参画機関 :  株式会社日立メディコ
京都大学(医、薬)
T.開発の概要
 ガンマ線は、体内代謝を直接観測できる唯一の手法だが、到来方向の測定が難しく可視化が困難であった。我々はコンプトン散乱を完全に測定できる装置を開発し、世界で初めて医療用のガンマ線の到来方向決定を単ガンマ線毎に行い、雑音が大変少ない高画質な3次元像を得る手法を開発した。この手法をもとに、30cm角の検出部面積を持つプロトタイプを製作し、実験小動物生体内の単一細胞の動的移動・代謝の可視化を実現し、新規測定機器を開発する。
U.中間評価における評価項目
(1)1次プロトタイプの製作のための30cm荷電粒子飛跡検出器(TPC)および30cmアンガーカメラの開発
 ガス増幅粒子検出器(μPIC)、座標演算回路およびTPC容器が完成し、30cmガンマカメラシステムとして動作させ、ファントム・動物実験で当初目標の半値の角度分解能でガンマ線像を得た。
(2)2次プロトタイプ要素技術としてのLSIの試作、評価
 数値目標どおりの集積度のものを開発した。
(3)2次プロトタイプ要素技術としての高性能30cmTPCの開発、高性能10cmμPICの完成
 数値目標以上の高い利得の10cmμPICを開発し、最も利得を必要とする宇宙線μ粒子測定に成功した。
(4)2次プロトタイプ要素技術としてのピクセル型シンチレータ開発
 ガンマ線計測用結晶GSOの量産技術を確立し、エネルギー分解能、位置分解能ともに目標数値を達成した。
V.評価
 生体内の代謝を直接観察する手法として、コンプトン散乱の反跳電子を観測することによりガンマ線の到来方向を高精度に決定して生体内のガンマ線核種の3次元画像を得る装置は、検出器の原理を始めとしてシステムとしても新規性が高い。完成する装置によって高分解能の画像取得が可能となるかやや疑問が残るものの、広い領域を複数核種によって同時撮影が可能であることなど、PETに無い新規の性能を持つ生体内代謝測定装置として小動物のみならず医療への高い波及効果が期待される。
 装置開発は極めて順調に進行しており、当初目標に掲げた成果は十分に達成できると思われるが、今後は新規薬剤の開発の必要性を十分に吟味しつつ当初計画である装置の早期創出に努め、着実に推進すべきである。


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