資料4

開発課題名「スピン偏極電子源」

(要素技術プログラム)

チームリーダー :  中西 彊 【名古屋大学大学院 理学研究科 教授】
中核機関 :  名古屋大学
参画機関 :  大阪電気通信大学
T.開発の概要
 強く絞りこんだ円偏光レーザー光を、GaAs-GaAsP歪み超格子結晶薄膜に照射し、特定のスピン状態にある価電子のみを伝導帯へ励起する方法により、高偏極度並びに高輝度・大電流をもったスピン偏極電子源を開発する。これを用いて電子顕微鏡によるナノ磁区構造の実時間観察などを可能にする。
U.中間評価における評価項目
(1)透過光型偏極電子銃1号機(JPES-1)の組み立て
 組み立てが完了し、フォトカソード薄膜上でのレーザースポット径、印可時電極間暗電流、表面近傍の真空度のそれぞれの目標値達成に成功した。
(2)透過光型偏極電子源用GaAs-GaAsP歪み超格子薄膜フォトカソードの開発
 透過光基板の選定検討の結果GaP基板型を選定し試作した。
 GaAsPバッファ層の格子欠陥の抑制法を検討し、サンプルを作成、ビーム試験中。
(3)透過光型偏極電子銃1号機(JPES-1)の性能評価
 偏極電子ビームの偏極度、予備試験ではやや未達。
 量子効率、ビーム電流、ビーム輝度については達成。ビーム寿命は活性化チャンバでは達成済み。
(4)偏極電子源用電子光学系の設計と基礎特性の取得
 スピンマニュピュレータのビームシミュレーションをほぼ完了した。
V.評価
 本開発課題は、GaAs-GaAsP歪み超格子結晶薄膜に背面から円偏光レーザー光を照射することにより、世界最高の高偏極度・高輝度・大電流をもったスピン偏極電子源を開発し、表面電子顕微鏡による磁性材料製膜過程などにおけるナノ磁区構造の実時間観察を初めて可能にし得る有意義な要素技術開発である。
 開発は計画通りに進行しており、当初目標に掲げた成果は十分に達成できると思われるが、スピン偏極電子源を小型化して表面電子顕微鏡と接続するに当たっては、チーム内の連携をより強化して開発を進め、可能な限り早い段階でのプロトタイプ完成を期待する。今後は、対象となる電子顕微鏡側からの要求性能を明確化しつつ、着実に推進すべきである。


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