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新着情報

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洪水で沈んでも背を伸ばす「浮きイネ」の仕組みと起源を解明

戦略的創造研究推進事業 CREST

JSTnews 2018年9月号掲載

東南アジアでは、毎年雨季になると水かさが数メートルにもなる洪水が発生し、この過酷な環境が4〜5カ月続くこともあります。バングラデシュをはじめとしたアジアの洪水地帯で栽培される「浮きイネ」は、水没しても急激に草丈を伸ばし、水面から葉を出して生き延びることが知られていますが、その詳しい仕組みや起源は明らかになっていませんでした。

名古屋大学生物機能開発利用研究センターの芦苅基行教授らは、アジア各国で栽培されている68種類のイネのDNA配列などを比較し、バングラデシュの浮きイネにある特異な変異から、水没に応答して草丈を伸ばす鍵遺伝子のSD1遺伝子を発見しました。

SD1たんぱく質は、植物の草丈の伸長を促す植物ホルモンのジベレリンを合成する酵素です。浮きイネは水没すると植物ホルモンのエチレンを体内に蓄積し、このエチレンの働きによりSD1たんぱく質が大量に生産されます。一般的なイネに比べ、浮きイネのSD1たんぱく質の酵素活性は20倍も高い上、草丈の伸長をより強く促すタイプのジベレリンを生産することがわかりました。

近年、世界各地で気候変動が起きています。今後は、高収量の浮きイネ品種の開発や、さまざまな環境変化に応じたイネの開発技術へ貢献が期待されます。


水没に対する浮きイネの草丈の伸長

ゲノム中の配列の違いに関連する情報をプロジェクトを越えてワンストップで提供

ライフサイエンスデータベース統合推進事業 バイオサイエンスデータベースセンター(NBDC)

JSTnews 2018年8月号掲載

薬の効き方や疾患のかかりやすさ、お酒を飲むと顔が赤くなる体質などの「表現型」は、ゲノム配列の個人による違い(バリアント)と関係しています。表現型とバリアントの関係を発見するためには、研究対象とする集団に存在するバリアントの頻度情報が必要であり、多くのデータを活用できることが成功の鍵となります。しかし、日本国内ではこれまで研究プロジェクトごとに情報が公開されてきたため、横断的なバリアントの頻度情報の活用が、十分にはできていませんでした。

この課題を解決するために、JSTは各プロジェクトで生産された個人ゲノムを集計したバリアントの頻度情報や文献情報などを収集、整理し、さまざまな条件(バリアントのヒトゲノム上の位置、種類など)を用いて、ワンストップで検索できるデータベース「TogoVar」を作成し、公開しました。検索対象には、NBDCが運用するデータベースに登録されている日本人のゲノムデータから集計した、大規模なバリアントの頻度情報も含まれています。

今後、バリアントに付随する遺伝子発現データなどの情報を追加し、バリアントの頻度情報をさらに充実させ、日本人を対象とした高精度医療に向けたゲノム医科学の発展に寄与するゲノム情報基盤を目指します。

TogoVar https://togovar.biosciencedbc.jp/

開発したデータベース「TogoVar」のトップ画面

がんの血管構造を可視化「見ながら治療」に一歩

研究成果展開事業 センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム

JSTnews 2018年8月号掲載

がんの病態を個別に詳しく観察し、的確に治療し、効果を予測することへの注目度が高まっています。その観察対象の1つが、がん内部の血管です。がん組織に酸素や栄養を送り込む血管は、がん内部では非常に細く3次元的に複雑な構造を持つため可視化が困難でした。

量子科学技術研究開発機構の青木伊知男グループリーダーらは、@高感度のナノ粒子型MRI造影剤、A高感度の高磁場MRI、B低ノイズの低温受信コイルを組み合わせ、がん内部の血管構造を高解像度で3次元かつ安全に可視化する技術を開発しました。

実験では、大腸がん細胞をマウスの皮下に移植後、がんの直径が5ミリメートルになるまで育て、造影剤を尾静脈から投与しました。がん局所を高磁場MRIで撮影したところ、がん内部の小血管(細動静脈)の立体構造を50マイクロメートルの高い解像度で描き出すことに成功しました。

がんの血管形成を抑制する抗がん剤スニチニブを毎日投与すると、治療7日目には、がん表面の血管の一部が崩壊し、漏れ出したナノ粒子が組織内にたまり白いもやのように写りました。10日目にはナノ粒子がたまった白いもやの部分のがん組織の陥没が観察できました。ナノ粒子のたまり方には、腫瘍内でばらつきがあることも経時的に観察できました。

この造影剤には治療薬を搭載することも可能で、血管の可視化で薬剤が十分に届くかどうかを判断できます。もし不十分なら、放射線や粒子線治療の併用も考えられるでしょう。可視化情報に基づいて適切な療法を選び効果を予測する「見ながら治療」の実現が期待されます。


マウスの皮下に移植した大腸がん。がん内部の小さな血管の立体構造が明確に描出された(左)、
スニチニブを投与し、がん内部の血管構造の変化やナノ粒子型造影剤の分布を10日間追跡(右)。

磁性体中で電流を曲げるだけで加熱・冷却ができる熱電変換現象を観測

戦略的創造研究推進事業 CREST

JSTnews 2018年8月号掲載

金属や半導体において電流と熱流は相互に変換することができます。この現象は熱電効果と呼ばれており、温度差から電圧を作り出すゼーベック効果、逆に、電流を流すとそれに沿って熱流が生じるペルチェ効果が古くから知られています。磁性体において、これらの効果は磁化と電流のなす角度に依存する場合があります。ゼーベック効果が磁化と電流のなす角度に依存して異方的に変化することはすでに知られていましたが、その逆過程の異方性磁気ペルチェ効果については、これまで観測例がありませんでした。

物質・材料研究機構の内田健一グループリーダーらは、強磁性金属のニッケル(Ni)をコの字型に加工して一様に磁化させることで異方性磁気ペルチェ効果の観察を試みました。ロックインサーモグラフィ法と呼ばれる熱画像を精密に計測する技術を用いて、磁性体に電流を流した際に生じる温度変化を測定した結果、ペルチェ効果の性能が磁性体の磁化と電流のなす角度に依存して変化する振る舞いを直接観察することに初めて成功しました。

今後、異方性磁気ペルチェ効果の微視的メカニズムの解明や、より大きな効果を示す磁性材料の探索、開発を行い、電子デバイスの熱制御技術への応用を目指していきます。


異方性磁気ペルチェ効果の観測

有機太陽電池の材料を人工知能で予測

戦略的創造研究推進事業 さきがけ

JSTnews 2018年7月号掲載

有機太陽電池は、安価で軽量なことから実用化に向け世界中で研究が進められています。n型材料であるフラーレン誘導体など低分子化合物とp型材料である高分子化合物の混合物を溶かして塗布することで作られますが、高分子の構造には無数の組み合わせが存在します。混合膜の構造や太陽電池の性能は計算で予測できないため、これまでの方法では探索に限界がありました。

大阪大学大学院工学研究科の佐伯昭紀准教授らは、情報科学の力を使って、高分子構造を一瞬で選別し、性能を予測する手法を開発しました。

今回、手作業で集めた1200個の混合膜材料の化学構造や性能のデータセットを基にランダムフォレストを用いた分類器を構築し、人工知能(AI)による機械学習を行って、材料のデータから性能の予測ができるようになりました。その結果、すでに学習した化学構造に対しては95パーセント以上の正答率が得られました。

今後は、この手法を低分子材料にも応用し、より高効率な太陽電池材料の探索を進めていきます。

電子供与基、電子吸引基、アルキル鎖から構成される高分子構造の例(上)。
化学構造を指紋キーに変換し、ランダムフォレストで変換効率を分類する(中央)。
機械学習、実験科学、研究者による判断の双方向の融合(下)


代表的なフラノステロイドの化学構造。赤字はフラン環を示す。

微生物の休眠遺伝子を目覚めさせて新たなステロイド生合成経路を発見

国際科学技術共同研究推進事業 戦略的国際共同研究プログラム(SICORP)

JSTnews 2018年7月号掲載

自然界の生物は、分子量の小さい低分子化合物を介して互いに生育を促進したり阻害したりして共生していますが、研究室では一種類の微生物ごとに培養されるため、一部の化合物しか合成されていないと考えられています。実際に、生成物の知られていない生合成遺伝子が数多く存在し、これらは研究室の培養条件では発現しない「休眠遺伝子」と呼ばれています。眠っている遺伝子を覚醒させ、生合成の経路を解析する方法を確立できれば、新たな活性物質の生産につながると考えられます。

東京大学大学院薬学系研究科の阿部郁朗教授および、中国曁南(ジナン)大学薬学部のガオ・ハオ(高昊)教授、フ・ダン(胡丹)副教授らの国際研究チームは、植物と共生している糸状菌が、抗炎症治療薬として働くフラノステロイド化合物を生合成する機能を持つことに着目。ゲノム編集技術を用いて酸化酵素遺伝子を破壊し、その過程で蓄積する化合物や生合成に関わる反応経路を発見しました。

今後、共生微生物の遺伝子や化合物資源の解析法、活用法が構築されたり、医薬品や化合物などの類似化合物の合成に大きく役立ったりすることが期待されています。

粘土遊びがヒントに 有機分子で自在にナノ構造体を作る

戦略的創造研究推進事業 さきがけ

JSTnews 2018年7月号掲載

自在に形を作れる材料は物づくりに欠かせません。目に見えない分子の世界でも重要で、さまざまな合成反応の開発によって、ベンゼンのように大きさが1ナノメートル程度の小さな分子であれば精密に構造を作れるようになってきました。一方、数十〜数百ナノメートルの巨大分子には高度な機能をいくつも持たせることができるため、世界中で活発な研究が行われています。しかし、小さな分子から巨大分子を作ることは困難でした。

北海道大学大学院工学研究院の猪熊泰英准教授らは、子どもの粘土遊びを見て、古代から壺や水瓶を作る方法の1つである「巻き上げ技法」に注目しました。そして、柔軟なひも状分子にカルボニル基を多く入れることで「互いにペタペタくっつく」という粘土のような性質を持つ「カルボニルひも」を合成しました。

カルボニルひもは、水素結合などがひものいろいろな部分で起こり、固体状態で直線、S字、コの字など、従来の手法では形の維持が難しかったひも由来の曲線部を持つ構造を簡単に作ることができる画期的な構造体です。

今後、これまで以上に精密で柔軟な巨大分子が作れるようになり、発光体や電子素子など機能性ナノ材料への応用が期待されます。

粘土を細長くひも状に伸ばし、グルグルと巻き上げながらつないで器を作っている(巻き上げ技法)(左)。
同じ巻き上げ技法をカルボニルひも分子で行うと、分子変換のための触媒やガス分子を取り込むための容器を作ることができる。模様はアセチルアセトン誘導体(右)。

合成に成功した最長のカルボニルひもとベンゼンの比較(上)。
柔軟なカルボニルひもは、例えば棒状の分子に巻き付くことで螺旋状に形を変えられる(下)。


繊維状ウイルスM13ファージの模式図(a)と規則的に集合化したM13ファージの上面図と側面図の模式図(b)

簡便な方法でウイルスでできた熱伝導フィルムの開発に成功

戦略的創造研究推進事業 さきがけ

JSTnews 2018年6月号掲載

電気製品や電子機器の小型化を受けて、優れた熱伝導材料の開発が求められています。電気を絶縁し、柔らかく簡単に加工できる優れた材料として、有機系高分子材料が有用であると考えられています。しかし、金属やセラミックスと比較すると熱伝導率が2〜3桁低い点が問題となっており、有機系高分子材料の熱輸送効率を向上させる簡便な手法の開発が求められていました。

東京工業大学の澤田敏樹助教らは、M13ファージという無毒でひも状の構造を持つウイルス(繊維状ウイルス)を集めて作ったフィルムが、熱伝導材として機能することを発見しました。分子が溶解した水溶液を乾燥する際、端の部分に効率良く集積する「コーヒーリング効果」を応用したところ、この「ウイルスフィルム」は、端部において無機材料のガラスに匹敵する高い熱拡散率を示し、階層的に集まる生体由来素材が、熱伝導材として有用であることを見いだしました。

今後、有機系高分子材料に簡単な手法で高い熱伝導性を持たせたり、新しい熱輸送の機構を解明したりするだけでなく、ウイルス以外のさまざまな天然由来素材のデバイス材料としての開発にもつながると期待されます。

@すべての精子を吸い込むA運動性に乏しい精子は、押し戻されるB高い運動性の精子は、流れをさかのぼりながら泳いでいく
運動性精子選別器具の概略図(上)と三日月状構造部内での流れの様子(下)

直進よりも蛇行が良い 泳ぎ方で繁殖に有利なウシの精子を選別

研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)

JSTnews 2018年6月号掲載

日本では、家畜用の牛の繁殖の主流は人工授精ですが、受胎率が低下傾向にあり、繁殖性の改善のためにさまざまな試験研究が行われています。人間の不妊治療では運動性を失った精子を取り除くなど、活発な精子を集めるといった前処理がされていますが、家畜の繁殖では凍結した精液がそのまま用いられています。また、従来の活発な精子を集める技術では集められる精子の数が少なく、体外受精はできても処理後そのまま人工授精に用いることはできません。

産業技術総合研究所の山下健一研究グループ長らは、精子が流れをさかのぼるように運動することに注目し、より健全な精子を多く集められる選別器具を開発しました。また、直線に泳ぐよりも、蛇行しながら泳ぐ精子の方が、受胎率が高いことも見いだしました。

開発した選別器具は3つの筒状の液だめ構造を持ち、液面の高低差で精液を送り出します。さらに中央にある液だめの底面に三日月型の構造を設置し、運動性の高い精子だけを誘導する流れになるよう設計しました。この選別器具で集めた精子の質を調べたところ、DNAに損傷を持つ精子の割合が処理前ではおよそ7パーセントだったのに対し、処理後は約0.4パーセントへと大幅に改善されました。

今後、健全性の高い家畜繁殖用精液の大量生産や、精子の生化学分析の前処理技術としての活用を目指します。

拡大図
大面積のナノチューブ配列薄膜

単層カーボンナノチューブ薄膜の特異な光吸収特性を発見

戦略的創造研究推進事業 CREST

JSTnews 2018年6月号掲載

産業から出る排熱の約70パーセントは200度以下です。有効利用の方法がなく大量に環境中に放出されています。今後IoT社会を実現するためにも、環境から効率良く熱エネルギーを取り出せる、柔軟で、伸縮性を備えた高性能な熱電変換素子の開発が求められています。半導体型単層カーボンナノチューブ自体は優れた熱電変換特性を持つことが知られていますが、電気特性の制御された大面積のフレキシブルな薄膜として利用することは困難とされていました。

首都大学東京の柳和宏教授らは、米ライス大学の河野淳一郎教授らと作製した単層ナノチューブが一方向に配向した直径2インチに及ぶ大面積薄膜を用いて高密度に電子を注入する実験を行いました。偏光を用いて薄膜の光吸収特性を観測したところ、ゲート電圧を加えることによって高密度の電子が注入され、ナノチューブに平行な偏光では光が吸収されず、垂直な偏光では強い吸収が起きるといった新たな現象がわかり、ナノチューブが配向していることと、電気的に制御できることを検証しました。

配列したナノチューブ薄膜の性質は未知な点が多くあり、今後、配向カーボンナノチューブ薄膜の熱電特性を解き明かし、高性能なフレキシブル熱電変換素子の実現を目指します。

(a)新技術(3.8nmまで)/膜厚を厚くすることで形状磁気異方性による垂直磁化容易軸を実現(b)従来技術(20nmまで)/膜厚を薄くすることで界面磁気異方性による垂直磁化容易軸を実現
提案した形状磁気異方性を利用した磁気トンネル接合(a)と、従来型の界面磁気異方性を利用した磁気トンネル接合(b)の模式図。

世界最小直径3.8ナノメートルサイズの磁気トンネル接合素子の開発に成功

産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム(OPERA)
革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)

JSTnews 2018年5月号掲載

磁石の向きを電気的に制御して情報を記憶し、電気信号に変えて情報を読み出す不揮発性磁気メモリー(STT-MRAM)は世界中で研究開発が行われ、年内には本格的に量産が開始される見通しとなっています。

このメモリーには、2つの磁石層で絶縁体を挟んだ「磁気トンネル接合素子」が用いられますが、2010年東北大学のグループは、磁石の向きが絶縁体との界面に垂直に向こうとする性質を利用したSTT-MRAMの実用化のためのコア技術を開発しました。今後、STT-MRAMを大容量化、高性能化するためには、磁気トンネル接合素子を持続的に微細化していく必要があります。しかし、微細化すると情報の忘れにくさと磁石の向きの反転のしやすさを両立することが難しくなります。研究グループは、磁気トンネル接合素子を縦に長い形状にすることで磁石が長手方向に向こうとする性質を用いて、2つの要件の両立が可能であることを発見し、直径3.8ナノメートルの世界最小サイズの素子の作製に成功しました。

この技術によって、将来、現行の約100倍の100ギガビットクラスのワーキングメモリーが開発されれば、人工知能(AI)システムや自動運行システムの中核となる超低消費電力インテリジェントAIチップが実現されると期待されます。

(上)折れ線グラフ(下)実物写真
耐傷性の改良(上)と蒔絵調印刷を施した漆ブラック調バイオプラスチック(下)

漆ブラック調バイオプラスチックの実用化に向けて優れた耐傷性と蒔絵調印刷を実現

戦略的創造研究推進事業 ALCA

JSTnews 2018年5月号掲載

NECはこれまで、炭素循環型社会を実現するバイオプラスチックの普及拡大に向けて、非食用植物由来のセルロースを原料とする高度な環境調和性に加え、新たな付加価値として高級漆器が持つ独特の美しい漆黒(漆ブラック)を塗装無しで実現する「漆ブラック調バイオプラスチック」を、漆芸家の下出祐太郎氏(京都産業大学教授)と共同で開発してきました。

今回、漆ブラックの光学特性を保持しながら、布や紙で擦っても傷が入りにくい独自の添加成分の配合技術を開発しました。ガーゼ摩擦試験では100回程度擦っても光沢が保持され、一般的なプラスチックの中で最高レベルの耐摩耗性を実現しました。

さらに、下出氏が描いた最高級の蒔絵をモデルとして、特殊印刷に強いメーカーなどの協力を得て、インク組成や印刷条件を最適化しました。これにより、射出成形されたさまざまな形状の漆ブラック調バイオプラスチックに、精緻かつ立体感のある高品質な蒔絵調印刷が可能となり、量産品の大幅な付加価値向上を実現できます。

今後、実用化に向けて改良を進めると共に、樹脂材料メーカーと連携体制を構築して、装飾性と環境調和性を重視する耐久製品や高級日用品などでの利用を目指します。

(上)脳の右半球の画像(下)分布図
(上)大人の気持ちを推測する能力に関する課題を行った時、抑うつ気分が高まるほど脳活動が低下した部分(赤色)。(下)その課題時の脳活動値(縦軸)と抑うつ気分尺度(横軸)の変数間で示した逆相関。

気分の落ち込みを脳画像で「見える化」 子育て困難の予防に期待

社会技術研究開発センター(RISTEX)

JSTnews 2018年4月号掲載

少子化や核家族化などを背景に、養育者の身近に悩みを相談できる相手がいないなど子育ての孤立化が問題視されています。その中で、養育者のメンタルヘルスの重要性が指摘されています。

福井大学子どものこころの発達研究センターの友田明美教授、島田浩二特命助教らは、養育者の気分の落ち込みが深刻化する兆候を、脳の機能画像から発見する方法を見いだしました。脳の活動を見える化することで、目に見えない子育てのストレスや心の疲れを本人と周囲が客観的にわかりやすく把握できるようになれば、子育て困難に至る前に予防的な支援へつなぐことが期待できます。

実験では0〜6歳の子どもがいる母親30名を対象として、顔画像の表情からその人の気持ちを推測する課題を行いつつ、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて脳の活動を測定しました。その結果、気分の落ち込みが高い人ほど大人の気持ちを推測するといった共同子育てにとって重要な社会能力に関する脳右下前頭回)の活動が低下する傾向があることがわかりました。

今後、多くの施設で利用されるよう、企業との検出技術の共同開発や定期健康診査での活用を視野に入れた自治体との連携などを行い、養育者を支援するシステムとしての確立をめざします。

卵白写真と出来上がった卵白たんぱく質凝縮ゲルの写真
鶏卵より作製した卵白たんぱく質水溶液に、2種類のイオン性界面活性剤を加えると、水相と分離した透明な液状物質である卵白たんぱく質凝縮体が形成される。この凝縮体を熱処理(70度で加熱)すると高強度なゲルが得られた。

卵の白身を使った高強度ゲル材料を開発

戦略的創造研究推進事業 ERATO

JSTnews 2018年4月号掲載

生物の体を作る重要な成分であるたんぱく質は、金属やセラミックスに続く次世代の材料として注目されています。しかし、微生物や細胞を培養し生産するため時間も費用もかかるという問題がありました。

東京工業大学科学技術創成研究院の野島達也特任助教(現・中国東南大学准教授)、彌田智一教授(現・同志社大学教授)らは、大量かつ安く入手できる食品たんぱく質である卵白に注目しました。卵白は透明で流動性のある生の状態から、加熱により白く弾力を持ったゆで卵の状態(ゲル状態)に変わります。このよく知られた現象に着目して、ゆで卵の150倍以上の強度を持つ新材料を開発しました。

通常のゆで卵の白身では、たんぱく質はランダムに絡まり合ってゲル状態となっています。研究グループは、卵白たんぱく質を一定間隔に集積させて加熱すれば、たんぱく質は規則的に絡まり合って、強度の高いゲルが形成すると考えました。研究グループは、これまでに、たんぱく質にイオン性界面活性剤を加えることで、水中のたんぱく質が一定間隔に集積した物質「たんぱく質凝縮体」を形成させる技術を開発してきました。この技術を卵白に応用してみると、卵白たんぱく質が一定間隔に集積しました。さらにこの状態で、70度で熱処理することで実際に高強度なゲルができました。

手術糸や関節軟骨再生の素材など体内に残留せずに一定期間後に吸収されるような医療用の素材や、グミや麺など新たな食感を持つ低糖質食品への応用が期待されます。

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