事業成果

2019年度最新成果一覧

  • 高出入力と高エネルギー密度を両立 ハイブリッドキャパシターを開発

    産学共同実用化開発事業 NexTEP

    JSTnews 2019年5月号掲載

    自動車からの二酸化炭素排出量削減のため、車が減速する時に無駄にしている運動エネルギーを電気として回収する「減速エネルギー回生システム」の重要性が増しており、このシステムに適した蓄電デバイスが求められています。

    エネルギー回生システム用の蓄電デバイスには、急速充電と急速放電が可能であること、体積当たりのエネルギー密度が高いこと、長寿命であること、安全性が高いことなどが求められます。従来の蓄電デバイスには、二次電池(充電式の電池)や電気二重層キャパシターがありますが、それぞれ課題を抱えていました。

    日本ケミコンは、東京農工大学大学院工学研究院の直井勝彦教授らの研究成果を実用化し、2つの電極のうち、陽極に電気二重層キャパシターの原理、負極に酸化還元反応を利用した、ハイブリッドキャパシターを開発しました。負極にはキャパシター向けに調整したチタン酸リチウムを用いており、急速な充放電が可能な電気二重層キャパシターの利点を生かしました。体積当たりのエネルギー密度は従来品の電気二重層キャパシターに比べて1.91倍、かつ、10万回の充放電を繰り返した後でも、容量劣化は10パーセント以内と小さく、長期にわたり特性を維持できることを確認しました。

    ハイブリッドキャパシターを組み込んだ減速エネルギー回生システムの開発により、自動車の燃費改善や二酸化炭素排出抑制に貢献できると期待されます。

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    開発したハイブリッドキャパシターセル

  • 温室効果ガスを有用化学原料に変える触媒を開発 地球温暖化抑止への突破口に

    戦略的創造研究推進事業CREST

    JSTnews 2019年4月号掲載

    一酸化炭素(CO)と水素(H2)の混合ガスは、ガソリンやアルコールなどさまざまな化学製品の原料として利用されています。この混合ガスを、天然ガスの主成分であり、また代表的な温室効果ガスとしても知られているメタン(CH4)と二酸化炭素(CO2)から触媒を利用して合成する「メタンドライリフォーミング(DRM)」が、天然ガスの高効率利用と地球温暖化抑止の観点から注目されています。

    しかし、従来の触媒は、反応の副産物として大量のすすが発生し、生産効率の低下や装置の劣化を引き起こします。そのためDRMは、すすが発生しにくい800度以上の高温領域で行われてきましたが、多くの燃焼エネルギーを必要とすることから、工業規模の実用化には至っていませんでした。

    物質・材料研究機構の阿部英樹主席研究員らは、繊維状の金属ニッケル(Ni)と酸化イットリウム(Y2O3)が組みひものように互いに絡み合う特殊な構造を備えた「根留触媒」を開発しました。根留触媒の利用によって、従来の触媒では困難とされていた低温領域(500度未満)で、1000時間以上、すすの発生を抑えながら安定してDRMを促進することに成功しました。

    シェールガスなど非在来型化石燃料の市場拡大や新興国の経済成長に伴い、温室効果ガスの排出量は増え続けています。根留触媒は、地球温暖化対策に貢献するものと期待されます。

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    メタンドライリフォーミングの現在(左)とこの研究により実現される未来(右)

    • ラットの体内でマウス由来の腎臓を作製 再生医療への応用に期待

      戦略的創造研究推進事業ERATO

      JSTnews 2019年4月号掲載

      臓器移植のドナーが見つかるまでには何年も待ち続けなければなりません。問題解決の糸口となり得るのが、移植用の臓器を人工的に作製する技術で、その1つが2012年度に終了したERATOプロジェクトで確立した「異種胚盤胞補完法」です。特定の臓器が作れないよう遺伝子操作を施した受精卵にES細胞やiPS細胞を注入し、欠損するはずだった臓器が補われた個体を作製する胚盤胞補完法を異種間で実現する技術で、日本医療研究開発機構(AMED)に研究が引き継がれた後も臓器作製の研究の進展に貢献しています。

      自然科学研究機構生理学研究所の平林真澄准教授と東京大学医科学研究所の中内啓光特任教授らは、遺伝子操作で腎臓を欠損させたラットの中にマウス由来の腎臓を作製することに成功しました。ラットとマウス両方の遺伝情報を持たせた個体の体内に異種胚盤胞補完法を用いることで、マウス由来の腎臓を作製できることを実証しました。この成果は、移植用の臓器を動物の体内で作製し、多くの患者に届ける未来の移植医療への重要なステップといえます。

      動物の体内でヒトの臓器を作製する研究は国内で禁止されてきましたが、数年にわたり議論された結果、19年3月に条件付きで解禁されました。技術の安全性だけでなく、乱用防止や生命倫理の議論など、社会全体で科学技術の健全な運用を考える意味でも、本研究の進展から学べることは多そうです。

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      胚盤胞補完法を適用して腎臓欠損ラット体内にマウスES細胞由来の腎臓を作製できた。