事業成果

2020年度最新成果一覧

  • 光共振器で有機化学反応を制御 ミラー間の距離を調整するだけ

    戦略的創造研究推進事業さきがけ

    JSTnews 2020年4月号掲載

    2枚の反射ミラーが向かい合った光共振器の中では、ミラー間の距離に応じて特定のエネルギーの光が安定に存在することができます。光共振器中で起こる原子や光子の量子的現象の研究は進んでいますが、近年、有機分子の振動状態も変化することが発見され、化学反応に応用する試みが始まっています。

    北海道大学電子科学研究所の平井健二准教授は、ミラー間の距離を調整するだけで有機分子の狙った部位の化学反応を抑えることに成功しました。炭素と酸素が二重結合したカルボニル基を持つ有機分子を光共振器に入れ、ミラー間の距離を変えて存在しやすい波長の光を特定の赤外光に調整し、光のエネルギーを分子振動のエネルギーと一致させました。するとカルボニル基の伸縮振動が光共振器と相互作用してラビ分裂と呼ばれるエネルギー準位の分裂が観測され、カルボニル基の活性化エネルギーが上昇して反応性が低下することが確認できました。

    保護試薬や特別な触媒を使わずに特定の部位の反応性を抑えて選択的に化学反応を制御する方法として、医薬品や機能性材料などの合成プロセスへの展開が期待されます。

    詳しく知る [ プレスリリースへ ]

    光共振器による化学反応制御。ミラー間の距離dを光の波長λの半分にすると、波長λの光が安定に存在できる。分子振動(ν1)と光共振器(λ=2d)のエネルギーが一致すると、ラビ分裂と呼ばれるエネルギー状態の分裂が起こる。

  • 30分以内で高感度にがん検出 手術中の蛍光イメージングへ道

    研究成果展開事業 先端計測分析技術・機器開発プログラム

    JSTnews 2020年4月号掲載

    葉酸はホウレンソウの葉から発見された水溶性ビタミンで、細胞膜上にある葉酸受容体を通して細胞内に入り、DNA合成など細胞増殖に重要な役割を担います。この葉酸を取り込む葉酸受容体が、特に卵巣がんや子宮内膜がんの細胞では過剰に発現することが近年報告されました。以来、がん治療の標的分子として注目され、葉酸受容体を目印にしたがん検出の手法が検討されています。

    東京大学大学院薬学系研究科の花岡健二郎准教授らは、葉酸受容体があると蛍光を発する試薬を新たにデザインし開発しました。既存の蛍光試薬は、葉酸受容体以外の細胞組織にも吸着し、投与から検出までに数時間から1日程度かかってしまうのが課題でした。しかし、開発した試薬をがんモデルマウスに投与すると、葉酸受容体を過剰に発現したがん部位が30分以内ではっきりと検出されました。

    がんの短時間で高感度な蛍光イメージングを実現するこの試薬は、手術直前や手術中に投与して、目では見分けにくい小さながんを高い精度で発見できます。今後は、臨床医療での利用が期待される他、葉酸受容体が関わる生命現象を解明するツールとして生命科学の基礎研究にも役立てられます。

    詳しく知る [ プレスリリースへ ]

    がんモデルマウスに開発した蛍光試薬を静脈内投与した。室内の照明による白色光像で示すがん部位(上)を、30分以内に高感度で蛍光検出することに成功した(下)。