【プロジェクト訪問】被災した動物を救う「VMAT」(災害派遣獣医療チーム)が、DMATと合同訓練。群馬県の災害拠点病院に、ボランティアのワンちゃんも集合!

開催日:2019年(令和元年)11月9日(土)
会場:伊勢崎市民病院(群馬県伊勢崎市)

『研究開発成果実装支援プログラム【公募型】』 (RISTEX)
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災害では、人とともにペットも被災します。
被災した人については、「DMAT」という災害派遣医療チームの設置が国の防災基本計画に定められています。しかし、被災した動物を担当する組織については、特に定められていません。羽山プロジェクトでは、災害派遣獣医療チーム「VMAT」の実装に取り組んでいます。災害発生からおおむね48時間の「急性期」に現地に入り、被災動物の保護や避難所での動物管理にあたる組織です。
今回は群馬県伊勢崎市で、両者の合同訓練が開催されました。

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病院入口でDMATが、患者の重症度に基づいて治療の優先度を決定するトリアージエリアを設置する中、群馬VMATの診療車まわりでも、テントの設営や検査機器の準備が進められていました。周囲では、本日の訓練で被災者を演じる「主役」が待機中です。

動物の救急・救護処置に関する講習を受講し
災害発生直後から活動できる機動性を備えた
災害派遣獣医療チーム「VMAT」の訓練

羽山プロジェクトが全国での実装を推進する「VMAT」は、被災動物の保護管理や災害時の獣医師の役割等に関する講習を受講し、認定を受けたメンバーで組織される災害派遣獣医療チームです。獣医師や動物看護士、動物トレーナーなど4~5名が1チームとなって、主に災害発生直後から被災地に入り、人命救助を妨げない範囲で、動物への速やかな治療や保護管理を行います。
この日訓練を行った群馬VMATは、福岡VMATに続き全国で2番目に発足した組織。今回はDMATとの合同訓練ということで、より「本番」に近い状況を再現できます。
13:30の訓練開始と同時に、傷病者役が訪れはじめました。最初に向かうのは、病院の入口にあるDMATが設置したトリアージエリアです。想定される遣り取りをいくつかシナリオにして、傷病者役の方に演じていただきます。

想定シナリオ1 飼い主も飼い犬も怪我!

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飼い主:
「うちの犬が、逃げてきたらしい知らない犬と喧嘩して噛まれました。止めに入ったら私も噛まれてしまって。え? 犬はVMATへ? なんですかVMATって」

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対応:
飼い犬をVMATへ預け、飼い主も診察のため病院のトリアージへ。噛み傷がありますから、飼い主・飼い犬共に感染症にも気を配る必要があります。
ペットはVMATでの応急診療のあと、保護施設にお預かりします。飼い主に今後の流れを丁寧に説明し、安心して診察を受けていただくようお伝えしました。

想定シナリオ2 盲導犬は病院に入れる?

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飼い主(盲導犬ユーザー):
「コンロの火を止めようとして、両手に火傷を......診察をお願いしたくてここまで来ましたが、盲導犬は病院に入れないんですよね? どこかに預けるのですか?」

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対応:
飼い主と一緒に、盲導犬も病院内のトリアージへ。盲導犬は、盲導犬ユーザーと一緒に行動している場合は「ユーザーの一部」と見なされ、病院に入れます。
今回の訓練では、窓口で「盲導犬はどう扱う?」という遣り取りが発生し、少し時間がかかりました。訓練で確認したので、次からは大丈夫ですね。

「ペットが人見知り過ぎて、預けるのが不安」と言い張る飼い主、ぐったりしたペットを抱えてパニック状態の飼い主。DMATとVMATは、協力しながら診察前の振り分けを進めていきます。
VMATに搬入された動物は、体温を測り、超音波診断装置等で診察を受けます。動物は自分から痛む箇所を教えてくれません。見ただけではわからない箇所に怪我をしていないか、検査が必要です。
怪我がある場合は可能な範囲での治療を施し、基本的には保護施設でお預かりします。飼い主が怪我で入院しても、しばらくは安心して面倒をみてもらうことができます。

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写真左:VMATで超音波検査を受ける「傷病者役」のペット。今回の傷病者役は、動物病院の患者さんへのお声がけなどで飼い主と一緒に集まっていただいた、ボランティアのみなさんです。写真の傷病者役は、病院の入り口で飼い主と離れたためか、ちょっと不安そうですね。このあと「いてもたってもいられず病院を抜け出してきた飼い主(という演技)」と無事再会していました。
写真右:合同訓練中のDMAT本部。ペットは「怪我をした飼い主とともに」避難してくることが多いので、VMATとの連携は必須です。

動物も人も救われる体制を!
全国展開に向けて、応援をお願いします

訓練終了後に、診療車の中を拝見しました。トイレやシャワー、4~5人は無理なく横になれる就寝スペースがあり、プロパンガスやボイラー、発電機まで装備されています。被災地でも温かい食事を作りしっかり眠り、問題なく自活できます。
そして肝心のテーブル。周囲に設けられた3個のLEDライトと麻酔手術設備に電源が入れば、テーブルは手術台になります。
いつでも、どこでも、被災した動物のもとへ飛んで行ける心強い装備です。ただ、経費の問題もありますから、現実として出動範囲は近くの県などに限られるでしょう。

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診療車には、トイレとシャワールーム、寝台、プロパンガス、発電機完備。テーブル兼手術台は設備も充実、周囲に手術チームの作業スペースも取ってあります。
外部との通信手段も複数確保。5基の無線以外にも、この日は衛星電話のテストが行われました。「知り合いに、手があいたら電話してって頼んである!」とのこと。

VMATは現在、群馬、大阪、福岡、沖縄を拠点とした組織があります。このうち福岡VMATは熊本地震で、大阪VMATは大阪北部地震で初出動しましたが、今後予想される関東圏での災害に即時対応できる近県の組織は、まだ群馬VMATしかありません。
令和元年は台風被害で多数の水害が発生しました。「ペットがいるから避難所へ行かない(行けない)」という声がSNSで発信される一方、環境省ではペットとの「同行避難」をガイドラインで呼びかけています。動物を救うことが人を救うことにつながる、という認識が広まるとともに、救急医療だけではない課題も浮かび上がってきました。たとえばペットを飼っていない人との避難所での住み分けや、保護施設でのストレスマネジメント、飼い主とはぐれたペットの保護。羽山プロジェクトでは、そうした動物の避難生活についても、現状やニーズを調査中です。

各地で開催されるVMATの講習会は、毎回多くの方にご参加いただいています。北海道や東海地方でも結成へ向けた動きがあり、新聞での紹介をはじめ注目度は上がりつつあるようです。
どこかでこのブルーのウエアを見かけたら、応援を宜しくお願い致します。

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※所属・役職は、取材当時のものです。
(文責:RISTEX広報 公開日:令和2年2月17日)