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ベトナム産バイオマスから製造されたバイオガスの直接供給による燃料電池発電に成功!
~システム簡素化による燃料電池の途上国展開に期待~

地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS) https://www.jst.go.jp/global/about.html


白鳥 祐介
(九州大学水素エネルギー国際研究センター 准教授)

ベトナムでは、急速な経済成長により有機性廃棄物の増加による環境汚染や電力の安定供給が大きな課題となっています。九州大学水素エネルギー国際研究センターの白鳥祐介准教授を中心とする研究グループは、有機性廃棄物を“燃やさずに効率よく電力に変換”して利用し、ベトナムの持続的な発展につなげる取り組みを進めています。

JSTとJICAの地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)の支援により、2015年4月よりベトナム国家大学ホーチミン市校(VNU-HCM)のナノテク研究所(INT)と連携し、5年間の国際共同研究プロジェクト「高効率燃料電池と再生バイオガスを融合させた地域内エネルギー循環システムの構築」をスタートさせました。

プロジェクトでは、エビ養殖場(ベトナム・ベンチェ省)や製糖工場から排出される地域特有の有機廃棄物からバイオガスを製造し、これを固体酸化物形燃料電池(SOFC)に直接供給して、高効率で電力に変換します。そこから得られた電力を、定常的な電力供給が必要とされる養殖生産に、酸素を送り込むエネルギーとして利用するシステムの開発・実証を行っています。

今回、プロジェクトチームはメコンデルタ・ベンチェ省・エビ養殖場内の廃棄汚泥貯留池から集積汚泥を採取し、その中に存在するメタン発酵菌を、ベンチェ・製糖工場からのバガス(サトウキビの搾りかす)と廃糖蜜を資材として増殖させ、メタン発酵試験を行いました。その結果、ベトナム産バイオマスからバイオガスを安定的に生成させることに成功しました。さらに、製造したバイオガスを脱硫やメタン濃縮等の燃料精製なしに、そのままSOFCに供給して発電させることにも成功しました。(図1および図2参照)

以上の成果により、本プロジェクトでは、メコンデルタのバイオマスからバイオガスを製造し、それを燃料の精製過程を経ずに燃料電池により直接電力に変換する一連の手法を初めて見いだしました。これにより、燃料電池システムの大幅な簡素化と、途上国でのさらなる波及効果が期待されています。

本成果は2016年12月16日に開催された第25回SOFC研究発表会にて報告されました。

図1
図2
メコンデルタ産の廃棄物系バイオマスから製造したバイオガスを、燃料の精製過程(脱硫およびメタン濃縮)を経ずに直接SOFCに供給し、ポリマーバッグに貯めたガスを使い切るまで安定した電圧を得ることに成功した。