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細野秀雄 東京工業大学教授が2016年(第32回)日本国際賞を受賞

戦略的創造研究推進事業 https://www.jst.go.jp/kisoken/


2016年(第32回)日本国際賞を受賞した細野秀雄 東京工業大教授(左)。右は、同じく受賞したスティーブン・タンクスリー コーネル大名誉教授。
写真提供:(公財)国際科学技術財団。

細野秀雄 東京工業大学元素戦略研究センター長及び応用セラミックス研究所教授(JST戦略的創造研究推進事業 ACCEL研究代表者及びさきがけ研究総括)が、公益財団法人 国際科学技術財団から2016年(第32回)日本国際賞を授与されることになりました。「物質、材料、生産」分野で、「ナノ構造を活用した画期的な無機電子機能物質・材料の創製」が受賞業績です。
日本国際賞は、「国際社会への恩返しの意味で日本にノーベル賞並みの世界的な賞を作ってはどうか」との政府の構想に、松下幸之助氏が寄付をもって応え、1985年に実現した国際賞です。全世界の科学技術者を対象とし、独創的で飛躍的な成果を挙げ、科学技術の進歩に大きく寄与し、もって人類の平和と繁栄に著しく貢献したと認められる人に与えられるものです(国際科学技術財団ホームページより)。細野教授は、独創的な物質設計指針に基づき、従来の元素や化合物の概念や常識とされてきたものを覆す革新的な無機物質・材料の創製を実現するとともに、それらの産業応用への展開及び学術分野の開拓に多大な貢献を果たしてきました。

JSTにおいて、細野教授は1999年より、創造科学技術推進事業(ERATO)「細野透明電子活性プロジェクト」の総括責任者を務めました。酸化物は、資源的に豊富で、大気雰囲気で安定であり、環境にやさしい化合物群です。ERATOプロジェクトでは、酸化物のもつ光学的透明性という本来的な特徴を生かしつつ、半導体のように電子が活躍する機能の創出を目標に、研究が行われました。その結果、「高電子移動度を有する透明アモルファス酸化物半導体(TAOS)」「p型高伝導率酸化物半導体」「室温・大気中で安定なエレクトライド(電子化物)」などの成果を上げ、「透明酸化物エレクトロニクス」の新しいフロンティアを開拓しました。

細野教授はこれらの成果をもとに、2004年より戦略的創造研究推進事業 発展研究(ERATO-SORST)において、「透明酸化物のナノ構造を活用した機能開拓と応用展開」に取り組みました。特にTAOS研究の展開の1つとして、2004年にネイチャー誌で発表したアモルファス状態のIGZO(インジウム・ガリウム・亜鉛からなる酸化物)を用いた薄膜トランジスタ(TFT)に関する研究成果は、既存TFTの主力であるアモルファスシリコンTFTよりも1桁高い電子移動度を有するものとして、その後直ちに国内外のメーカーによる応用研究の原動力となりました。今日では、高解像の液晶ディスプレイや大型の有機ELディスプレイの駆動に使われ始めています。また「p型高伝導率酸化物半導体」研究の流れにおいて、構成元素の組み合わせを換える研究を進めていく中で、新しい高温超伝導物質が発見されました。超伝導との相性が悪い磁性の象徴的元素である鉄を含む化合物が高温で超伝導を示すことを発見し、「金属系」「銅酸化物系」に続く「第3の超伝導ファミリー」として世界中が注目し、一大研究フィーバーの先導役となりました。

細野教授は現在、JST戦略的創造研究推進事業ACCELにおいて、「エレクトライドの物質科学と応用展開」というテーマを推進中です。新材料として注目されるエレクトライドが持つ化学的、熱的に安定で電子を放出しやすいという特性を最大限に生かして、高活性のアンモニア合成・分解触媒材料や電子材料などへの応用展開に取り組んでいます。今後もさらに優れた研究成果が生まれ、「食糧問題」「水素エネルギー社会」「高度情報化社会」といった社会的テーマに貢献することが期待されます。

[細野教授とJSTの関係]
創造科学技術推進事業(ERATO)
細野透明電子活性プロジェクト 総括責任者
1999年10月から2004年9月まで

戦略的創造研究推進事業 発展研究(ERATO-SORST)
透明酸化物のナノ構造を活用した機能開拓と応用展開 研究総括
2004年10月から2010年3月まで

戦略的創造研究推進事業 ACCEL
エレクトライドの物質科学と応用展開 研究代表者
2013年10月から(推進中)

戦略的創造研究推進事業 さきがけ
新物質科学と元素戦略 研究総括
2010年11月から(推進中)