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A-STEPの成果から医療系ベンチャー2社が誕生

最先端の研究成果を医療分野で実用化するためにベンチャー企業2社が誕生しました。重症心不全の治療薬である心筋細胞再生製剤を開発した「Adipo Medical Technology」社(大阪府)と、新材料を用いた多目的接着性人工骨を開発した「メディカルクラフトン」社(岡山県)です。

慢性心筋梗塞では、何度も心筋梗塞を起こしたことによって、心筋細胞のもととなる心筋幹細胞が減少、消失しています。医薬基盤・健康・栄養研究所 創薬資源部部長の松山晃文さんらは、心筋細胞を再生させるため、皮下脂肪などにほんのわずかに含まれ、さまざまな細胞へと変化する能力を持つ幹細胞を原料とした心筋細胞再生製剤と、この幹細胞を心筋細胞に分化させる薬剤を開発しました。併せて、効率的な幹細胞増殖技術や凍結長期保存技術などの関連技術も確立しました。

この技術を市場に出すために設立されたAdipo Medical Technology社はこれから企業治験を開始し、3年後に製造販売承認申請、5年後に年間売上5億円を目指しています。

一方、人工骨にはこれまで顆粒状やペースト状のリン酸化カルシウムが使われてきましたが、骨への吸収・置換が遅いという課題がありました。北海道大学大学院歯学研究科の吉田靖弘教授らは、これらの課題を克服するため新素材リン酸化プルランを含んだ新しい人工骨を開発しました。プルランは日本が世界シェアを独占している天然多糖類で、食品や医薬品にも使われています。そのリン酸化物であるリン酸化プルランは歯や骨に強固に接着します。吸収・置換が早く、安全性も高い人工骨開発に必要な新材料です。

歯周病は中高年の8割以上がかかっており、歯を失う最大の原因となっています。また、寝たきりにつながる高齢者の骨折は、今やすべての骨折患者数の7割近くに達し、今後も増え続けるのは確実です。短期の骨再生・再建につながる多目的接着性人工骨には大きな期待が寄せられています。この人工骨を開発したメディカルクラフトン社は今後、歯科から整形外科へと事業を拡げる方針で、年間6.5億円の売り上げを目指しています。

JSTは、起業する意欲のある研究者に実用化のための支援を行っています。ベンチャー設立数は、100社を超えました。


心臓への投与後、脂肪組織由来多系統前駆細胞が心筋へと変化する様子。