JSTトップ > トピックス > 詳細記事

最新情報

トピックス

CREST・さきがけ合同シンポジウム「進化する光イメージング技術~百聞はイメージングに如かず~」開催報告
2013年06月20日 東京大学 一条ホール

JST-CREST「先端光源を駆使した光科学・光技術の融合展開」研究領域(研究総括:伊藤 正 大阪大学 特任教授)とさきがけ「光の利用と物質材料・生命機能」研究領域(研究総括:増原 宏 台湾国立交通大学 講座教授)は、光科学技術合同シンポジウム「進化する光イメージング技術 ~百聞はイメージングに如かず~」と題して、2013年06月20日 東京大学一条ホールにて公開シンポジウムを開催しました。

CREST・さきがけ二つの研究領域は、2008年度に同時に発足しました。CRESTでは16の研究チームにより、さきがけでは40名の研究者により、高出力、超短パルス、超長波長のレーザーなど最先端の技術を駆使した光源の開発やその光源を用いた物性計測、材料開発に関する研究から、光による細胞の機能や生体組織の計測や観察など、基礎から応用まで幅広い研究が行われています。

今回のシンポジウムプログラムは、光イメージングに関わる6名の研究者(CREST3件、さきがけ3件)と2名の招待講演者から構成され、光イメージングに関する最先端の話題と光科学技術のさらなる発展への期待を語っていただきました。講演内容は、科学の知識をお持ちの一般の方にもご理解いただき、光科学技術のイノベーションへの期待を持っていただくため、敢えて学会的な専門にはあまり立ち入らず、研究のバックグラウンドと成果、今後の夢について紹介していただきました。ご参加いただいた皆様のおかげで、質疑応答の時間も延長するほど熱のこもったシンポジウムとなりました(写真1参照 3D画像を鑑賞中)。

開催に先立ち、伊藤研究総括からは、「3次元(3D)を使った研究発表は、医学では多く見られますが、物理系ではあまり見られません。複雑な分子や結晶、複雑な動きをする細胞などを3Dで表現することでより理解が深まると考え、今後も3D講演の検討を進めていきたい。」とのお話がありました。その中で、招待講演の大門寛教授(奈良先端科学技術大学院大学)には、3D原子イメージングに関してご講演いただきました。3Dプロジェクターを用意し、実際の計測データを3Dとして示していただくことで、原子の配列をよりわかりやすく解説して頂きました(写真2参照)。昼休みには、3D画像のデモンストレーションも実施し、多くの方に生体や動物などの3D画像をご覧いただきました。

もう一人の招待講演者である柳田敏雄教授(大阪大学)には、生体分子を1分子でイメージングする方法やタンパク質であるミオシン一分子の動きから解き明かされる筋肉の動き、さらに、細胞中の遺伝子発現のイメージングについてご講演いただきました。また、センター長を務めておられる理化学研究所・生命システム研究センター(QBiC)や、情報通信研究機構・脳情報融合通信研究センター(CiNNet)の研究成果を交えたお話も興味深いものでした。

CREST研究代表者の3件のご講演では、普段お話し頂けない基本的な内容からご説明いただきました。特に、今村健志教授(愛媛大学)のがん細胞に関するご講演では、多くの測定方法で得られたがん細胞や血管の画像をもとに、がんの基本的な性質の理解から、それを通じて将来期待される抗がん剤開発の話まで、とても分かりやすく興味深い内容でした。さきがけ研究者3名のご講演でも、最先端の研究を分かりやすくご説明いただきました。その中でも、永井健治教授(大阪大学)のご講演では、ご自身の研究テーマである蛍光タンパク質に関する現状だけでなく、「街路樹に蛍光タンパク質を植え込み、街灯の代わりとしたい」という将来の夢まで披露され、会場の雰囲気が大いに和んだひとときでした。

さいごに増原研究総括から、「光科学技術の研究は今後も必要である」というご挨拶があり、シンポジウムは閉会しました。二つの領域では、今回のシンポジウムを、先端光科学技術アウトリーチ活動の第一弾として考えており、今後も領域での取り組みなどをわかりやすい形で発信していきます。

(JST戦略研究推進部  前野仁典)