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CREST「脳神経回路」研究領域 第1回公開シンポジウム 開催報告
2013年03月02日 東京 ベルサール神保町
JST-CREST「脳神経回路の形成・動作原理の解明と制御技術の創出」研究領域(研究総括:小澤 瀞司 高崎健康福祉大学大学 教授)は、「脳神経回路の形成と機能 ―脳はどのように作られ、どのように働いているのか―」と題して、第1回公開シンポジウムを開催しました。
本研究領域は平成21年度に発足し、19の研究チームにより、脳を構成する神経回路がどのように作られ、どのように動作してそれぞれに特有な機能を遂行しているのか、個々の神経回路の活動の統合により、脳が極めて全体性の高いシステムをどのようにして作り上げているのかを追求し、脳神経回路の形成過程と動作を制御する技術を創出することを目指しています。これらの研究の成果は精神・神経疾患の予防・診断・治療や失われた脳機能の修復・補完技術の開発に活用されることになります。
本シンポジウムでは、脳の仕組みに興味のある一般の方々を対象として、現在進行中の研究の中から、脳神経回路の形成と機能に迫る4人の研究代表者が研究内容をわかりやすく紹介しました。参加人数は、延べ180名を超え、多くの方々にご来場いただきました。
開会挨拶では、小澤 瀞司 CREST「脳神経回路」領域・研究総括から、JST、CRESTの紹介に続いて、脳研究の課題や脳神経回路研究の重要性が述べられました。
続いて、柚崎 通介 慶應義塾大学医学部・教授より、「記憶・学習の分子機構についてわかってきたこと―神経回路はどのように作られ、情報を伝達し、貯蔵するのか―」と題して、記憶・学習の分子機構であるシナプスの形成と維持のメカニズムについてご講演をいただきました。次に、森 憲作 東京大学大学院医学系研究科・教授からは、「食べ物や危険物の匂い情報を処理する脳神経回路の仕組み」と題して、脳の中で匂い情報が処理される方法と嗅覚神経系の研究についてご講演をいただきました。3番目の講演は、星 英司 東京都医学総合研究所認知症・高次脳機能研究分野・副参事研究員より、「運動指令を作り出す脳神経回路の仕組み」と題して、前頭葉の機能から運動指令がどのように作り出されるかについてご講演をいただきました。最後の講演として、山下 俊英 大阪大学大学院医学系研究科・教授より、「脳・脊髄障害後の神経回路の再編成と機能回復」と題して、損傷を受けた中枢神経回路において代償的な神経回路が編成される仕組みについてご講演をいただきました。いずれも、一般の方々向けに研究の背景から講演が始まり、最先端のデータも盛り込まれた魅力的なものであり、参加された方々の期待に応えるものであったと思います。
最後に、閉会挨拶では、石正 茂 JST・戦略研究推進部長から、本研究領域の今後の展望と多くの方々の来場の御礼が述べられました。