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「第2回領域会議」(平成21年10月)について

本研究領域の第2回領域会議が平成21年10月1日と2日の2日間にわたり宮城県宮城郡松島町のホテル大観荘で開催されました。この会議には、さきがけ研究者(1期生)9名、長田研究総括と9名のアドバイザー諸先生(当領域の8名と他領域の1名)、およびJST関係者3名が参加しました。

当領域の研究者とアドバイザーには東北大学の方が5名いらっしゃるため今回は仙台周辺の会場を選びました。ホテルは名所松島にありましたが当然のことながら観光の時間はなく、研究発表と討論・研究交流に専念しました。

なお、領域会議の前日に東北大学の研究室4か所(工学部の新井先生、江刺先生、梅津先生、多元研の藪先生のご研究室)の見学会を実施しました。普段見ることができない施設なども見せて頂き参加者一同大変勉強になりました。各ご研究室の説明をして頂いた方々に御礼申し上げます。

さて、領域会議では長田研究総括のご挨拶の後、研究者9名の発表が行われました。(1名は体調不良のため欠席でした)今回は、英語で研究発表と質疑応答を行うことになっていたため、研究者の方々はいつもより緊張していました。しかし研究総括とアドバイザーの先生方から厳しくもあたたかいご質問とアドバイスが出され、実りある討論が行われ研究者は多くの示唆を得たようです。その後、夕食と研究交流会を通じて、前回以上に研究総括やアドバイザー諸先生、さらに研究者同士での密接な討論ができました。

2日目はアドバイザーの江刺正喜先生(東北大学・原子分子材料科学高等研究機構 教授)に、特別講演として「MEMS研究の経緯とオープンコラボレーション」と題するご講演を賜りました。江刺先生は、これまで進めてこられたMEMS研究の概要と、真に役立つ優れた世界的研究をどのように進めるべきかなどについてのお考えを熱心にお話しになりました。聴衆一同、先生の卓越したご業績はもちろん、その情熱と哲学、高い志に深い感銘を受けました。

そして、2日目にはポスター発表も行いました。前回の領域会議では討論が若干不十分でしたが、今回はポスター発表を2時間実施したため、より深い研究交流ができたようです。

以下に、さきがけ研究者5名の感想文がありますので是非ご覧下さい。

なお、第3回領域会議は、本年採用された15名の2期生を交えて、平成22年3月1日(月)と2日(火)関西で開催する予定です。

(文責:技術参事 佐々木隆)


第2回さきがけ領域会議 感想文

1.梅津 光央 Mitsuo Umetsu

40に手が届く年齢でさきがけ研究に採択していただき、初めての領域会議が2月に熱海で開催されました。ここで初めて同じ領域のさきがけ研究者の皆さんとお会いしましたが、私よりも1つ世代が若い方が多く、なかなか若い研究者の方々も頑張っておられるという印象がありました。そして、実際に領域会議で初めて研究者の方々の研究内容を聞いて、その印象は正しく、自分がその年代の時に果たして同じレベルに達していたかと感じました。

今回の領域会議では、さきがけ研究者の研究内容をアドバイザーの先生とさきがけ研究者で情報共有する趣旨が大きかったのですが、それでもアドバイザーの先生方からは鋭い質問がいくつもありました。私も年齢が40近くになって、アドバイスを頂ける機会が少なくなってきておりました。この領域会議では色々予測もできないような発見がありそうで、緊張感と期待をもつことができました。

今回のさきがけ領域「ナノシステムと機能創発 」はトップダウンとボトムアップの技術を融合して 「モノ」を創るということがテーマであるため、さきがけ研究者だけでなく、アドバイザーの先生方もバイオ分子、材料工学、機械工学を専門とする幅広い著名な先生方がお集まりになっております。このような集まりは既存の学会などでは体験できないかと思います。私はタンパク質を中心としたボトムアップオンリーな研究を現在行なっておりますが、今後この領域を生かしてボトムアップ技術との融合を図れそうな匂いを感じた領域会議でした。

2.佐々木 善浩 Yoshihiro Sasaki

風光明媚な松島の恵まれた環境の中、非常に有意義な会議に参加させていただきましたこと、長田先生、アドバイザーの諸先生方、ならびに事務局の方々に改めて感謝いたします。

熱海での第1回目の領域会議と同様、非常に興味深く、様々な研究者からもたくさんの刺激を受ける事ができました。今回は、会議の前日に、東北大学の研究室を見学する新しい企画もあり、今まで馴染みのなかった分野の研究室の内側まで拝見させていただきました。それぞれの研究室でアプローチは異なるものの、各研究室とも共通して、誰がみても面白い研究、を積極的に発信しようという視点で様々な工夫をしておられることに改めて感銘を受けました。また、2日目の江刺先生の特別講演では、卓越した研究内容はもちろんのこと、研究に対する姿勢、さらには研究者としての生き方まで、穏やかな口調ながら非常に深い内容の講演を聴かせていただき、時間を忘れて講演に聞き入っておりました。

自分自身の発表においては、前回同様、長田先生はじめ、アドバイザーの先生方からの非常に厳しいながらも親身なお言葉をいただきました。改めて、自身の研究に対する姿勢を問いなおすとともに、今後の研究に向け非常に励まされるものでした。交流会においても、各先生から様々なご助言を受けることができましたが、特に長田先生からの、「創発」についてよく考えなさい、とのお言葉が印象に残りました。恥ずかしながら、創発、について深く思いを馳せることなく漫然と「創る」意味でとらえていた自分には目から鱗のおもいでした。現時点では、「創発」について、未だ、具体的で明白な答えを見つけ出すことはできておりません。しかしながら、この「創発」を常に問いかけながら、粘り強く研究に取り組みたいと考えております。

3.松村 幸子 Sachiko Matsumura

第2回領域会議は初めて具体的な研究内容を発表する機会、しかも英語での発表ということで、予想はしていたものの、いざ始まってみると、やはりかなり緊張して臨むことになってしまった。他の研究者の方の発表を聞いていても、勉強不足と英語力のなさが拍車をかけ、どこか上擦ったような感覚が拭えなかった。案の定、自分の発表では言葉に詰まってしまった。アドバイザーの先生の「さきがけなんだからこのくらいは当然こなして、しっかりとしたディスカッションが英語でできるように」というお言葉が非常に耳に痛かった。

結局、口頭発表では質問することもできずに終わってしまったが、今回はポスター発表も行われた。これは非常に有り難い機会だった。アドバイザーの先生と、また研究者同士でリラックスして話をすることができ、より具体的な内容あるいは展望を聞くことができ、ふだん接することのない分野への知識と興味、視野が広がる思いであった。

今回の領域会議でアドバイザーの先生方がおっしゃったのは、「目先の成果ではなく、研究全体のビジョンの中で何をやるべきか」、「どういう問題意識をもって研究を行うのか」ということであった。また江刺先生のご講演では、にこやかな口調ながら、語られた研究者としての志、壮大な思想に圧倒され感銘を受けた。同時に、目の前の課題と真摯に向き合い、1つ1つの仕事を積み重ねることの大切さを強く感じた。第1回領域会議でも、長田総括から「大きなことに挑戦しなさい」とのお言葉を頂いていたが、正直、今回の領域会議を前にして、「何かしらの結果を出さなければ」と焦った気持ちを抱えていた私にとって、冷水を浴びせられたようであった。領域の目標である「機能創発とは何か、よく考えてほしい」とのお言葉があったが、このことも含めて、今回の領域会議はあらためて自分の研究を見つめ直す意義深い機会となった。このような機会を与えてくれるさきがけに参加できたことを、あらためて幸せに思う。

4.山内 悠輔 Yusuke Yamauchi

2009年10月1日〜2日、宮城県の松島海岸で第2回目の領域会議が開催されました。会場は松島海岸の駅の近く、駅前から急勾配の曲がりくねった山道を数分、車で上ったホテルである。この第2回目の領域会議は、最初の1年間の研究報告をしなければならず、私自身相当緊張していた。松島は景色を楽しむ観光地であるが、そもそも景色を楽しむ精神的な余裕はあるわけがない。

研究者、アドバイザーの先生も着席し、長田総括からの挨拶で会議が始まった。1年間の研究成果を報告するだけあって、会議中、いつもと違う緊張感が走っていたように感じた。しかも、今回は総括からの提案で、すべて発表は英語ですることになっており、会議の終わりまで良い緊張感が続いていたと思う。日本語でさえ緊張するのに、ましてや英語でアドバイザーの方に、しっかりと自分の研究成果を発表しなければならなかった。1回目の領域会議とは違って、アドバイザーの先生方から質問やコメントがたくさんでた。もっと大きなビジョンを持ちなさいと言われた研究者、方針転換を突き付けられた研究者、発表のまとめ方が悪いと注意された研究者、など様々である。研究の内容に関する議論でも、厳しいコメントが多く出たが、本当に率直な意見であり、学会発表や大学での学生との議論では発見できない重要なアイデアもあった。非常にありがたいことである。少々心配なのは、第3回の領域会議も、英語なのかという点である。

5.横川 隆司 Ryuji Yokokawa

第2回目の領域会議は、風光明媚な宮城県松島にて開催され、非常に有意義な2日間を過ごすことができました。2回目の会議ではありましたが、本格的に研究を開始してその成果を発表するという点において初の会議となりました。また、口頭発表に加えポスター発表も開催され、まだ駆け出しの私にとっては、十分に成果がないことを非常にプレッシャーに感じていました。さらに、長田先生がご提案された「英語で発表」ということで、実際に発表が始まると研究者の間にはただならぬ緊張感が漂っていました。

発表では、我々研究者の研究環境という点についても報告しました。若手が多いため、大学の講座制か独立か、担当の学生数や装置の多い少ないなどといった点です。必ずしも制度や人員配置だけで研究環境の良し悪しはわかりませんが、各研究者の日頃の研究環境を垣間見ることができました。

本題の成果発表については初回ということもあり、やはり実験データの羅列になってしまったことを反省しています。今考えると、第1回の領域会議で先生方から、成果ばかりにこだわらず自由な発想で新しい考え方を議論すべきとアドバイスいただいたにもかかわらず、十分に考慮できていなかったと思います。また、発表後のディスカッションやポスター会場、交流会では先生方に非常に有意義なご提案をいただきました。それらを通して、さきがけの会議に参加して毎回強く考えさせられることがあります。例えば、1般の学会などにおける研究発表、ディスカッションというのは、あくまでその研究ありきで進められます。しかし、さきがけの会議では、なぜその研究があるのか、研究の新規性や重要性はもちろんのこと、より根本的な考え方・視点についてディスカッションが行われます。特に、グローバルな視点で自分の研究のアピールをする必要があります。この視点が、研究を組み立てていく上で、自分の殻に閉じこもらないためにも非常に重要なことだとより認識し実践するようになりました。研究の立案、推進についてはこの点が重要であることは認識していたものの、我々のような若手が先生方に囲まれ身を持って経験できる点で領域会議は非常に有意義なものです。

領域会議の度に考え方を深め研究の軌道修正をしながら、さきがけ研究が少しずつ前に進んでいく実感があります。会議の直前に発表準備をして、会議のときだけよく考えるのではなく、日々の研究生活においても「熟考する時間」を十分取るように心がけたいと考えています。そのためにも、合宿形式で先生方、研究者と寝食を共にする中で自然と研究の話ができたことは、とても良い刺激になりました。先生方、研究者の皆さん、今後ともよろしくお願い致します。

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