二次電池用電極基板の製造技術


(背景)
電池容量や充放電特性、サイクル寿命などの電池性能が向上する新しい電極基板の要請

 現在、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池などの二次電池は、水酸化ニッケルを正極活物質とし、カドミウムや水素吸蔵合金を負極活物質として組み合わせ、水酸化カリウムなどのアルカリ水溶液を電解液として用いている。これら電池の性能は、例えば、(1)電池容量(エネルギー密度)は、電極基板に充填される電極活物質の種類と充填量に依存する、(2)充放電特性は、水酸化ニッケルや水素吸蔵合金などの電極活物質への電子の受渡しの容易さ(電極の集電効率)に大きく左右される、(3)サイクル寿命は、繰り返し充放電による電極活物質と電極の変質及び劣化に影響される(例えば、ニッケル水素電池の場合、繰り返し充放電により電極活物質である水素吸蔵合金の微粉化や脱落を生じ、電極の集電効率が悪化する)ことが知られている。従って、電池の性能アップには、電極構造の改良などが重要な要素となる。
 現在、ニッケル水素電池などに使用されている電極は、電気伝導性や電極表面積などの改善のためニッケル多孔体からなる電極基板に活物質を充填することにより作成されている。この電極基板は、発泡ウレタン樹脂にカーボンなどの導電体を塗布して、ニッケルを電気メッキした後、加熱によりウレタン樹脂を分解・除去して製造しているが、焼成時にニッケルが収縮しないため、(1)骨格内部に電極活物質が充填できない独立した空間があること、(2)電極基板の多孔度は発泡ウレタン樹脂の多孔度(7,600個/cm3) 以上にすることが出来ないこと、から新たな電極基板の出現が望まれていた。

(内容)
ニッケル微粒子が均一に付着した発泡ウレタン樹脂を還元焼結し、微細な多孔質構造を持つ二次電池用ニッケル電極基板を製造

 本新技術は、ニッケル微粒子、バインダー等からなるスラリーを発泡ウレタン樹脂に含浸し、乾燥後、水素雰囲気中で還元焼結することにより、微細な多孔質構造を持つ二次電池用電極基板を製造するものである。
 本新技術における製造上の特徴は、発泡ウレタン樹脂が熱分解・除去される際に、ニッケル微粒子等で構成されるスラリーの膜が焼き締められ、縦横厚み方向のそれぞれが20〜30%収縮し、微細な多孔体となることにある。
 そのため、電極基板の単位体積当たりの空孔数を発泡ウレタン樹脂(既存の電極基板)の2〜3倍 (14,000〜21,000個/cm3) にでき、電極活物質の充填率と利用率を高めて電池の高エネルギー密度化が図れる。また、電極基板と電極活物質との接触面積が増加するので電極活物質との電子の授受が行われやすくなり、高速充放電が可能となる。さらに、電池活物質の微粉化や脱落を抑制し、サイクル寿命を長くすることが可能となる。
 本新技術による回路の製造は次の工程により行われる。

(1)ニッケルの粉砕

電極基板の原料となるニッケル粉末を超微細粉砕機により、ミクロンレベルまで粉砕する。

(2)含浸液の作成

ニッケル微粒子にバインダーや分散剤などを添加し、スラリー状の含浸液を作成する。

(3)発泡ウレタン樹脂への含浸

厚さ2mm程度の発泡ウレタン樹脂にスラリーを含浸させた後、乾燥させる。

(4)焼成・調厚・切断

水素雰囲気中で還元焼結させ、微細化した多孔質構造を有するニッケル電極基板を得る。その後、必要に応じて、調厚・切断を行い、電極基板とする。
(効果)
携帯電子機器、電気自動車用二次電池の電極基板などへの利用

 本新技術の二次電池用電極基板は、

(1)
電極活物質の充填率と利用率を高め、電池のエネルギー密度を高くできる。
(2)
電極基板と電極活物質との接触面積が増加し、電池の集電効率が向上する。
(3)
電極活物質の微粉化による接触抵抗の増加や脱落が抑制でき、電池のサイクル寿命を長くすることができる。

などの特徴を有することから、パソコン、携帯電話などの電子機器用二次電池の電極基板に利用されるとともに、電気自動車用の二次電池の電極基板にも利用されることが期待される。


This page updated on December 14, 1998

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