科学技術振興事業団報 第67号

平成10年6月8日
埼玉県川口市本町4-1-8
科学技術振興事業団
電話(048)226-5606(総務部広報担当)

「導電材用高強度銅合金の製造技術」の開発に成功

 科学技術振興事業団(理事長 中村守孝)は、科学技術庁金属材料技術研究所第4グループ総合研究官 井上廉 氏、同研究所フロンティア構造材料研究センター主任研究官 坂井義和 氏、東北大学金属材料研究所教授(元科学技術庁金属材料技術研究所極限場研究センター長)前田弘 氏の研究成果である「導電材用高強度銅合金の製造技術」を当事業団の委託開発制度の平成6年度課題として、平成7年3月から平成10年3月にかけて昭和電線電纜株式会社(社長 權正信行、本社 神奈川県川崎市川崎区小田栄2-1-1、資本金約187億円、電話(044)344-1111)に委託して開発を進めていた(開発費約1億円)が、このほど本開発を成功と認定した。
 電線や電気部品などに使われる導電材料では、導電率を高く保ちながら強度(引張強さのような変形に対する耐性)を高めることが、電気・機械製品の小型化や信頼性向上、電気鉄道の高速化対策、大電流を流し強磁場を発生させる技術の開発などに重要である。しかしながら、導電材として導電率の高い銅を主成分とする合金(銅合金)が従来から多数開発されてきたが、導電率と強度の両立については必ずしも満足なものが得られていないのが現状である。
 本新技術は、銅に適量の銀を配合して溶解し、銅を主成分とする相と共晶相(銀を主成分とする相と銅を主成分とする相が混在する相)からなる複合組織の合金を鋳造して、これに適切な熱処理と冷間加工を交互に施すことにより、強度の高い導電材用合金を製造するものである。本新技術は、(1)熱処理工程において合金組織の素地をなす銅から銀が析出し、全体として銅の純度が上がって銅本来の導電率が回復する効果、(2)加工工程を経て複合組織が微細化し、変形の妨げとなる加工歪みが集積して材料強度が増す効果、(3)熱処理と冷間加工を繰り返すと、これらの効果が促進される、などの本研究者らが見出した銅銀系の性質を利用している。
 本新技術による銅合金は、高強度と良好な導電性の両性質を併せ持つことに加えてリサイクルが容易であるなどの特徴を有することから、エレクトロニクス・メカトロニクス用部品、高速電気鉄道の架空線、強磁場発生用の導体などへの利用が期待される。

導電材用高強度銅合金の製造技術(背景・内容・効果)

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This page updated on June 19, 1998

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