科学技術振興事業団報 第55号

平成10年3月5日
埼玉県川口市本町4-1-8
科学技術振興事業団
電話(048)226-5606(総務部広報担当)

「低エネルギー電子線を用いた穀物殺菌システム」を委託開発課題に選定ならびに開発企業を選定

 科学技術振興事業団(理事長 中村守孝)は、農林水産省食品総合研究所企画科長(元放射線利用研究室長)林 徹氏らの研究成果である「低エネルギー電子線を用いた穀物殺菌システム」を委託開発課題として選定するとともに開発企業を選定した。
 近年、冷凍食品やチルド食品などで強い加熱処理を行わない原材料を用いた加工食品が増えるのに伴い、食品加工の分野では微生物の汚染の少ない原材料の使用が求められている。加工食品の原材料の中で、小麦、殻付蕎麦、玄米などの穀物、香辛料、豆類など乾燥状態の食品原材料では、微生物は乾燥した内部には侵入できないが、表面に付着し、時には熱や殺菌剤に強い胞子をつくることがある。これまで、このような乾燥食品の殺菌には加圧した高温の水蒸気を用いていたが、この方法では、耐熱性の微生物の完全な殺菌が困難であったり、でんぷんやタンパク質の変性、香りの揮散などがさけられないなどの問題があった。
 本新技術は、穀物、香辛料、豆類などの乾燥状態の食品原材料粒子を回転、移送させながら、表面全体に低エネルギーの電子線(ソフトエレクトロン)を均一に照射することにより、これらの表面に付着する細菌など微生物の殺菌を行うシステムに関するものである。
 本システムは、ソフトエレクトロンが照射対象物の表面部分でエネルギーを失い、深部には到達しない性質を利用しており、ソフトエレクトロン照射により、穀物などの食品原材料の表面部分を選択的に殺菌でき、処理に伴う内部品質の劣化もみられないため、穀物、香辛料、豆類などの乾燥食品原材料の加工工程での殺菌処理への利用が期待される。
 本新技術の開発は、日新ハイボルテージ株式会社(代表取締役社長 鈴木隆、本社 京都市右京区梅津高畝町47番地、資本金16,000万円、電話075-864-8801)に委託する予定で、開発期間は3年間、委託開発費は3億円の予定である。今後、科学技術庁長官の認可を受けた後、新技術の開発を実施する。

低エネルギー電子線を用いた穀物殺菌システム(背景・内容・効果)

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