プレス加工は、(1)加工速度が速く、自動化が容易であり、生産性が高い、(2)均質な製品を大量生産できる、(3)材料の利用率が高い、(4)塑性加工であるため、機械的強度の高い部品ができ、軽量化が可能、(5)加工に熟練を必要としない等、部品生産に要求される種々の特徴を有している。このため、大量生産を前提として、自動車をはじめ、電気・電子、精密機器その他の部品生産に広く用いられるとともに、コストダウンのために、切削や粉末成形等の加工からプレス加工への転換が図られてきた。しかし近年では、大量生産品の生産拠点の海外移転や消費者ニーズの多様化に伴い、より付加価値の高い加工や、さらなるコストダウン、多品種少量生産への対応がプレス加工にも求められている。これに対し、工具である金型の製作に時間と費用がかかる上、加工自由度が低くなってしまうというプレス加工の問題を克服するため、金型の迅速試作や分割化とともに、高い自由度で高度な加工を行える生産システムが検討されている。
本新技術は、積層や加熱等の複合加工要素をユニット化し、金属プレス加工における多工程連続自動加工の一つである順送り加工の工程に組み込むことで、従来の加工法では別工程と組み合わせなければ加工できなかった複雑な三次元形状部品や塑性加工の限界を超えた寸法の部品を、一連の工程で一体成形できる高度な複合生産システムに関するものである。
従来のプレス加工でも、金型の中で型抜きされたプレス部品を積層して、トランスやモータのコア等の柱状部品が作られていた。しかし、本新技術では、プレスにより抜き落とした加工品を、下から押し上げて元のコイル材料に戻し、積層ユニットまでの搬送を行うとともに、材料に予め抜き加工した位置決め穴とユニットに取り付けられている位置決めピンとをはめ合わせて材料同士の位置決めを行うことにより、外形の異なる打抜き材料が積層できる(図1)。これにより、従来の加工法では別工程と組み合わせなければ加工できなかった複雑な三次元形状部品を、一連の工程で一体成形でき、部品点数や工程数の削減が期待できる。また、金属プレス加工は塑性加工であるため、プレス工程を繰り返すと材料が硬化するため、成形可能な形状や寸法が限定される。本新技術では、順送り加工に組み込んだ加熱ユニットにより、一連の工程の中で材料を加熱して焼き鈍しを行えるため、従来の金属プレス加工の限界を超えた超深絞り等の加工が行える(図2)。さらに、レーザ溶接ユニットや樹脂射出ユニット等、ユニットの種類を増やすことで、より高度な複合生産システムへの展開が期待できる。また、各ユニットの組み合わせを替えることにより、製作する部品に応じて工程を自由に組み立てられるため、近年の多品種少量生産への要求にも対応可能な加工自由度の高いシステムとなる。
本新技術による生産システムは、
などの特徴を持つため、
などに広く利用されることが期待される。
This page updated on April 20, 1998
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