科学技術振興事業団報 第4号

平成9年2月6日
埼玉県川口市本町4-1-8
科学技術振興事業団
電話(048)226-5606(総務部広報担当)

生活・社会技術開発事業において「水溶性抗がん剤の乳化調製技術(肝癌用)」を委託開発課題に選定ならびに開発企業を選定

 科学技術振興事業団(理事長 中村守孝)は、宮崎県工業試験場(場長 森 清貴)副場長 中島 忠夫氏ならびに宮崎医科大学(学長 森満 保)講師 東 秀史氏らの研究成果である「水溶性抗がん剤の乳化調製技術(肝癌用)」を委託開発課題として選定するとともに開発企業を選定した。  
 肝癌治療法の一種の肝動脈薬物投与療法では水溶性の抗がん剤等を用いているが、がん部位以外への抗がん剤の広がりによる副作用を抑制するのが容易でないなどの問題がある。
 そこで、油状物質のヨウ素化ケシ油と抗がん剤水溶液との乳化物製剤を攪拌法などにより調製し、乳化物をがん部位の血管内壁に沈着させる方法等が検討されているが、乳化物中の液滴径の不均一さや粒径制御が困難であることから、乳化物の沈着、抗がん剤の放出の制御に限界がある。このため、治療に適した径の均一な乳化物製剤を調製する技術の実現が強く望まれている。
 本新技術は、南九州に豊富に存在するシラスと、石灰、ホウ酸等を出発原料として得られる細孔径が均一なシラス多孔質ガラス膜を用いて、抗がん剤を含む水溶液とヨウ素化ケシ油からなるW/O/W(水/油/水)型乳化物製剤(油滴の中に水滴が分散したもの)を得、肝癌の肝動脈薬物投与療法に用いるものである。
 本新技術によれば、各種水溶性抗がん剤を含む径の均一な乳化物製剤を容易に調製でき、そのため抗がん剤を効果的にがん部位に一定期間とどめることができるので、全身性の副作用を抑えつつ治療を行うことが可能となるので、肝癌の治療に広く利用されることが期待される。
 本新技術の開発は、明治乳業株式会社(代表取締役社長 中山 悠、本社 東京都中央区京橋2丁目3番6号、資本金230億9千万円、電話03-3281-6118)及びエス・ピー・ジーテクノ株式会社(代表取締役社長 高橋康之、本社 宮崎県宮崎郡佐土原町大字東上那珂永正向16079-41 宮崎テクノリサーチパーク内、資本金9千万円、電話0985-50-0855)に委託する予定で、開発期間は5年、委託開発費は約4億5千万円の予定である。今後、科学技術庁長官の認可を受けた後、新技術の開発を実施する。

「水溶性抗がん剤の乳化調整技術(肝癌用)」(背景・内容・効果)

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