科学技術振興事業団報 第35号

平成9年11月6日
埼玉県川口市本町4-1-8
科学技術振興事業団
電話(048)226-5606(総務部広報担当)

「近接場光学顕微分光測定システム」を委託開発課題に選定並びに開発企業を選定

 科学技術振興事業団(理事長 中村守孝)は、(財)神奈川科学技術アカデミー(理事長 長倉三郎)「大津『フォトン制御』プロジェクト」プロジェクトリーダー/東京工業大学総合理工学研究科教授 大津元一氏らの研究成果である「近接場光学顕微分光測定システム」を委託開発課題として選定するとともに開発企業を選定した。
 試料に一定波長の可視光を当てたとき試料で散乱される光や試料からの発光の波長分布(スペクトル)を測定する分光測定は、物質の化学組成や構造を調べるための分析法として広く利用されている。近年では、半導体、生体組織、高分子材料などの微細領域について局所的な分析を行う必要性から、顕微分光の技術の発展が求められている。一方、一般に光を波長(可視光: 0.4-0.8ミクロン)に比べて小さな領域に集光することはできず、これまでは1ミクロンよりも微細な半導体構造や細胞内の組織などの精密な分析は事実上不可能であった。このため、より微細な領域を分光測定するための新たな手段の実用化が望まれていた。
 本新技術は、光の波長よりも小さな開口部以外を遮光コーティングした光ファイバー先端から漏れ出る、ごく近くの近接場領域(波長より短い距離の領域)にのみに届く光(近接場光。エバネッセント光とも呼ばれる)を利用することにより、分光測定を光の波長のスケールよりも微小な領域に適用可能とする装置に関するものである。微小開口部以外を金属でコーティングした鋭利な光ファイバー先端をプローブ(探針)とし、これを試料に近接させて開口部表面付近に局在する近接場光を試料表面の目的の微小部位に重ねて作用させ、その部位から発せられた散乱光や発光を取り出して分光測定する。本新技術により、散乱光(ラマン光)や発光(フォトルミネッセンス)の分光法を光の波長以下の0.1ミクロン程度のスケールの微小領域へ適用することが可能になり、試料表面の微小部位について化学組成や結晶の歪などの局所的な評価を行えるため、半導体素子構造や生体組織などの微小部分の分析を伴う先端的な研究開発の基盤技術として利用が期待される。
 本新技術の開発は、日本分光株式会社(代表取締役社長 重久三行、本社 東京都八王子市石川町2967-5、資本金9,000万円、電話0426-46-4118)に委託し、開発期間は3.5年間、委託開発費は約5.5億円を予定している。今後、科学技術庁長官の認可を受けた後、新技術の開発を実施する。

「近接場光学顕微分光測定システム」(背景・内容・効果)

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