用語解説
*1 量子力学

 20世紀初頭に、粒子は波としての性質を同時に併せ持つという新理論が建設され、ミクロな粒子は全てその法則に従うことが知られている。ニュートンの古典力学と対比して、量子力学と呼ばれる。量子力学では、波動関数という複素数の関数を用いて粒子を記述するために位相の自由度が発生する。複素数と位相に関しては下記参照。

(複素数と位相)
 2つの実数x,yからi2 = -1 となるような虚数単位 を用いて z = x + iy という数を作りこれを複素数と呼ぶ。(x,y)を2次元座標とする平面(複素平面)を考え、原点から点(x,y)を見込む角度を複素数zの位相と呼ぶ。(図2)
図2 複素数の位相

*2 q-ビット(量子ビット)

 2進数では「0」、「1」の2つの"状態"であらゆる整数を表現できる。これをビットと呼ぶ。一方、電子のスピンも「時計周り」と「反時計周り」の2つの状態があるのでちょうどビットに対応させることができる。しかし、スピンは量子力学で記述されるもので、この2つの状態を"混ぜ合わせた"状態を作れるために連続無限大の大きな自由度を持つ。これをビットと区別してq-ビット(量子ビット)と呼ぶ。

*3 ベリー位相

 電子状態はいくつかの実数のパラメーターによって決定される。また量子力学的波動関数の位相は、このパラメーターの変化に伴い変化する。この位相の変化は、パラメーターを座標とする空間において、幾何学的に決定されることをM.V.Berryが1984年に発見し、「ベリー位相」と呼ばれている。結晶中の電子波動関数のベリー位相は、電子の重心運動と密接に関連している。
*4 半導体のバンド構造と価電子帯

 結晶中の電子のエネルギーは幾つかのグループ(帯またはバンド)に分かれ、その間には間隔(ギャップ)が開いている。このような電子状態の構造をバンド構造と呼ぶ。半導体では電子が詰まっている最も高いエネルギーのバンド(価電子帯)と電子が詰まっていない最もエネルギーが低いバンド(伝導帯)の間のエネルギーギャップが比較的小さい。p型半導体では、半導体中に別の元素を少量導入することで、価電子帯にある電子の数が減り、詰まっていたはずの価電子帯に空席(これを正孔と呼ぶ)が生じる。
*5 スピン・軌道相互作用

 相対性理論を考慮にいれた量子力学によると、電子の重心運動(軌道運動)と自転運動(スピン)の間には関係があることが導かれスピン・軌道相互作用と呼ばれる。この相互作用はバンド構造にベリー位相を与える。

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This page updated on August 8, 2003

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