科学技術振興事業団報 第34号

平成9年10月20日
埼玉県川口市本町4-1-8
科学技術振興事業団
電話(048)226-5606(総務部広報担当)

酸化物系高温超電導コイルによる超電導磁石(7テスラ)の開発に成功

 科学技術振興事業団(理事長 中村守孝)は、共同研究支援事業として平成7年度より埼玉県にて産学官の共同研究「各種反応・プロセスにおける磁気効果に関する研究」(共同研究推進委員長 北澤宏一 東大教授)を支援しているが、この共同研究の中で、住友電気工業(株)(社長 倉内憲孝、本社 大阪市中央区北浜4-5-33、資本金797億円、電話 06-220-4141)に委託し試作を進めてきた「酸化物系高温超電導コイルによる超電導磁石(7テスラ)の開発」に成功した。
 この本共同研究は、従来の磁場環境では磁気効果が小さいとして重視されていなかった反磁性・常磁性物質を主な対象として、強磁場環境で新たに発現する各種反応・プロセスにおける磁気効果を明らかにし、また、新たな磁気科学の確立に不可欠なパルス磁場・傾斜磁場・高磁場等の磁場発生技術や先進的計測技術等を開発するとともに、温度−圧力−磁界を制御パラメ−タとする新たな反応・プロセスの制御技術、また、磁気現象の利用技術の確立と応用を目指すものである。
 今回開発した超電導磁石は、酸化物系高温超電導体のみで7テスラ励磁に成功した。冷凍機を用いた冷却により20Kで安定して運転が可能で、2テスラ/分の高速励磁においてもクエンチすることなく安定性が高いものである。同社では、すでに4テスラを発生できる超電導磁石を開発しており(平成8年12月、本共同研究成果)、更にマグネットの大型化、冷却構造の改善により今回の結果を得たものである。
 今回達成した7テスラは、酸化物系高温超電導体のみを使用したマグネットとしては世界最高値であり、金属系超電導マグネットに迫る値である。今後本マグネットを有効に活用し上記共同研究を推進する。特に、従来のコイルでは実現できなかった、高速で変化する強磁場中での電気化学反応の解析に威力を発揮するものと考えられる。
 また、本マグネットの取扱いの容易さにより、従来実験環境として考慮されてこなかった磁場を制御因子とする各方面での研究が進むことが期待される。
 なお、本磁石の詳細は、国際磁石会議(MT-15;10月20日〜、北京)及び国際超電導シンポジウム(ISS97;10月27日〜、岐阜市)において発表する。

酸化物系高温超電導コイルによる超電導磁石(7テスラ)(背景・内容・効果)

7Tマグネットの構造

7Tマグネットの概観

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