【詳細説明】


*戦略的創造研究推進事業の研究内容との関連

 地球変動のメカニズム領域の「熱帯林の林冠における生態圏-気圏相互作用のメカニズムの解明」(研究代表者:中静(浅野)透 総合地球環境学研究所 教授)において、マレーシアサラワク州のランビル国立公園に高さ80mの林冠クレーン(高さは林冠クレーンとしては世界最高)を建設し、研究を進めている。このなかで、東南アジア熱帯雨林に特有な一斉開花現象のメカニズム、熱帯雨林の炭素・水循環、林冠の構造と機能のスケールアップなどが研究されている。

*一斉開花のメカニズム(戦略的創造研究推進事業の研究成果1)

 一斉開花は東南アジアの熱帯雨林に特有(南米・アフリカではみられない)な現象であるが、ランビル国立公園では約10年間にわたり、400本以上の樹木の開花・結実がモニタリングされている。これまでエルニーニョによって生ずる夜間の異常低温が開花の刺激となっているという説が有力であったが、短・中期の乾燥によって引き起こされる可能性が大きいことを見出した。また、樹木の体内での栄養塩の蓄積も開花の規模に影響する。また、林冠アクセスシステムを利用して、数百種の樹木の花粉媒介者とそれによる花粉の移動距離が明らかになっている。

*熱帯雨林の炭素収支(戦略的創造研究推進事業の研究成果2)

 森林による炭素の固定量推定は、近年世界各地で計測が行われているが、湿潤熱帯林ではアマゾン以外にはなく、東南アジアの湿潤熱帯林における観測はランビルが最初である。測定は、林冠クレーンなどを利用した空気力学的方法によるフラックス測定のほか、樹木の成長による固定量測定も並行して行われており、これらの推定によれば、年間1haあたり4-5トンの炭素が固定されていることが明らかとなった。

*林冠の三次元構造や反射特性の測定(戦略的創造研究推進事業の研究成果3)

 林冠クレーンを利用したレーザー測定により、林冠の三次元構造を詳細に測定することが可能となった。また、太陽光の反射特性の精密な測定も可能となり、衛星などによるリモートセンシングデータの詳細な検証が行われている。

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This page updated on July 11, 2003

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