【語句説明】


注1 TLR(Toll様受容体)

 Toll(ショウジョウバエで真菌感染に対する生体防御に必須の受容体)の哺乳動物のホモログ(アミノ酸配列がほぼ同じたんぱく)で、現在TLR1-TLR10までの10種のファミリー分子が報告されている。それぞれのTLRが、病原体の構成成分を特異的に認識し、細胞内シグナル伝達を引き起こすことが明らかになってきている。例えばTLR4はグラム陰性菌に特異的に存在するリポ多糖とウイルス由来のタンパク質、TLR3はウイルス由来の二本鎖RNAを認識する。

注2 病原体の構成成分

 病原体に特有でヒトには存在しない構造成分で、グラム陰性菌のリポ多糖、微生物DNA (CpG DNA)、リポタンパク質、ウィルス由来の二本鎖RNAなどがその例である。各病原体の構成成分は、TLRにより特異的に認識され、自然免疫系の活性化を誘導する。

注3 TIRドメイン

 Toll様受容体(TLR)ファミリーの細胞質内の領域で、ファミリー間に共通して存在する。他のたんぱくとの会合部位と考えられている。たんぱくの会合は、同じドメイン同士、あるいは別のドメイン同士の間で起こる。MyD88などのアダプター分子も、TIRドメインを持っており、これらTIRドメインを持ったアダプター分子群(MyD88, TIRAP, TRIF)はすべてTLRを介したシグナル伝達で重要な役割を果たしている。

注4 MyD88

 細胞内に存在する分子で、TLRファミリーの細胞内領域と相同性の高いTIRドメインを有する。MyD88欠損マウスは、TLRが認識する全ての病原体の構成成分に対する炎症性サイトカインの産生が認められない。

注5 炎症性サイトカイン

 免疫系、特に自然免疫系は病原体の生体内への侵入があった際、炎症反応を起こすことにより病原体を排除させるが、その炎症反応の本体が炎症性サイトカインの産生である。病原体の侵入をTLRファミリーが察知し、MyD88を介した細胞内シグナルの活性化の結果、産生された炎症性サイトカインにより、発熱などの炎症反応が惹起され、細菌などの病原体が排除される。

注6 I型インターフェロン(IFN-α/β)

 サイトカインの一種で、特に抗ウイルス活性を有するサイトカインとして知られている。ウイルスに感染した種々の細胞から産生される。

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This page updated on July 11, 2003

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