平成15年5月27日 埼玉県川口市本町4-1-8 科学技術振興事業団 電話(048)226-5606(総務部広報室) URL http://www.jst.go.jp/ |
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ダイオキシン類(注)は、強力な毒物であると同時に、各種野生動物の性ホルモンバランスを撹乱することで、たとえばある種の動物のオスとしての機能を減退させるなどの一種の環境破壊を引き起こすことが大きな社会問題となりつつある。また、ヒトの健康に対する害も懸念されており、特に子宮組織に対して女性ホルモン、特にその一種であるエストロゲンと同じような働き(女性ホルモン様活性)を示すことで子宮内膜症(注)などを引き起こす疑いが高い。しかしながら、ダイオキシン類の生体内での作用については、その多くが不明のままである。 今回、加藤グループは生体内に存在する二種類の受容体(注)、ダイオキシン類受容体と女性ホルモン受容体とを比較検討することで、ダイオキシン類による女性ホルモン作用への撹乱の分子メカニズムを詳細に検討した。 その結果、ダイオキシン類の内分泌撹乱作用について、その一端を分子レベルで解明することに成功した。 すなわち、女性ホルモンのない環境では、ダイオキシン類は女性ホルモン様活性を示す一方で、女性ホルモンのある環境では、ダイオキシン類は女性ホルモン濃度に応じて女性ホルモンの働きを抑制する作用を示すということである。 今回の成果は、内分泌撹乱作用の分子機構の解明のみならず、細胞内シグナル伝達機構の制御解明にもつながることが大いに期待される。更に、この成果を利用した内分泌撹乱物質の同定や内分泌撹乱防止法構築への応用も期待される。 具体的に得られた結果は以下の通りである。
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語句説明 | |||||||||
・ダイオキシン類: ごみの焼却などの際にできる化学物質の一種。化学的には、PCDD、PCDF、コプラナーPCBという3種類物質群の総称で、ベンゼン環2つが酸素原子を介するなどして結合し、そこに塩素原子がいくつか付いた構造をしている(下図参照)。 一度できると分解されにくい物質で、また水には溶けにくく、脂肪などに溶けやすいという性質をもっている。急性毒性と慢性毒性があり、慢性毒性については、発がん性、生殖・発生毒性、免疫毒性などが報告されている。 | |||||||||
ダイオキシン類
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・子宮内膜症: 子宮内膜やそれに似た組織が、本来あるべき部位(子宮の内側)以外の部位に発生して、増殖する病気。病状が進むと激しい月経痛がおこる。また不妊との関係も指摘されている。子宮内膜の肥厚化は女性ホルモンに依存することが知られているため、最近ではダイオキシン類のような女性ホルモン様活性を有する化合物群と子宮内膜症発症の関連に興味が持たれている。 | |||||||||
・受容体: 細胞に存在して、細胞外からの物理・化学的な刺激を認識して細胞にその刺激を伝達し、蛋白質。例えばダイオキシン受容体は細胞外にダイオキシン類が存在することを、女性ホルモン受容体は細胞外に女性ホルモンが存在することを細胞内に伝達させる。細胞は、この伝達を受けることにより、遺伝子を発現させるなどして様々な反応を行う。 | |||||||||
参考 Nature誌英文タイトル: Modulation of oestrogen receptor signalling by association with the activated dioxin receptor doi :10.1038/nature01606 | |||||||||
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