第一部 科学技術振興事業団の機関評価にあたって | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1.はじめに
科学技術振興事業団(以下「事業団」という)では、国等の定める研究開発に関する評価の指針等に基づいて、事業団が運営する事業の全般にわたって評価を行い、事業団が実施している事業の内容とその科学技術振興上の意義を明らかにするとともに、事業団の運営にあたっての改善事項を抽出することを主眼とする評価(以下「機関評価」という)を行っている。(資料1「科学技術振興事業団の事業に係る評価実施に関する達」参照) 事業団は機関評価を実施するにあたり事業団の外部から選任される評価者からなる総合評価委員会(以下「委員会」という)に機関評価を依頼するものとされており、熊谷信昭委員長(大阪大学名誉教授)及び13名の委員から構成される当委員会が設置された。(資料2「総合評価委員会規則」及び資料3「総合評価委員会委員名簿」参照) 事業団は多岐にわたる事業を実施していることから、機関評価については事業を「科学技術情報流通促進事業」、「技術移転推進事業」、「基礎的研究推進事業」、「研究交流促進・研究支援事業」、「科学技術理解増進事業」の5つに大別し、平成10年度から毎年度個々の事業についての評価を順次行うとともに、平成14年度にそれらの結果を総合した運営全般についての評価を行うとしており、平成13年度は研究交流促進・研究支援事業及び科学技術理解増進事業を機関評価の対象と選定した。 委員会では研究交流促進・研究支援事業を評価するため研究交流促進・研究支援事業評価部会(以下「部会」という)を設けることとし、委員会委員である 岸 輝雄 独立行政法人物質・材料研究機構理事長を部会長に指名した。部会は岸部会長、総合評価委員4名及び部会委員6名の合計11名から構成され本事業の評価を行った。(資料4「研究交流促進・研究支援事業評価部会委員名簿」参照) 部会は平成14年4月3日から平成14年5月16日まで3回の審議を行い、評価の状況を委員会に対して中間的に報告した。(平成14年6月19日) 委員会での意見等を踏まえ、部会は更に1回の審議を行い評価報告書の取りまとめを行った。平成14年10月7日、委員会は部会における取りまとめを踏まえ本報告書を作成した。(資料5「審議経過」参照) 審議にあたっては、事業団から評価対象事業についての説明を受けた後、(1)事業による成果は得られているか、(2)国民に十分な説明が出来ているか、(3)効率的・効果的に業務運営がなされているか、(4)業務運営システムに問題はないか、(5)時代(社会・経済)の要請の方向に沿っているか、(6)科学技術の発展の状況と整合しているか、の視点から評価を行うこととした。また、更に、(1)事業の中でも特に重点化すべきものは何か、改善点は何か、(2)我が国が将来に向かって科学技術分野で果たすべきことに関する展望を踏まえた上での評価対象事業の展開を図るための方策如何、という視点から提言を行うことした。(資料6「科学技術振興事業団の機関評価の目的及び評価の視点について」参照) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2.評価対象事業の概要と実績
評価対象事業の概要と実績(平成13年度末現在)は次のとおりである。( ![]() (1) 研究交流促進事業(人材交流・国際交流) -日本学術振興会への移管事業- 1 )) STAフェローシップ事業 外国の研究者に我が国の国立試験研究機関等において研究活動を行う機会を提供し、我が国の研究環境を国際化することを目的。
2 )) 研究協力者海外派遣事業 海外での科学技術協力の能力を有し、かつ意志を有する国立試験研究機関等の研究者を募り、研究協力を必要とする海外機関(アジア・太平洋諸国、旧ソ連・東欧諸国)に派遣することにより、海外との研究交流を活発化し、科学技術交流を促進することを目的。
3 )) 若手研究者海外派遣事業 国立試験研究機関等の若手研究者(35才以下)に、海外の優れた研究機関において長期間研究に専念できる機会を提供することにより、独創的な研究の展開(知的資産の形成等)とその資質の向上を図ることを目的。
4 )) 科学技術特別研究員事業(ポスドク派遣事業) 若手研究者の育成と国公立試験研究機関等の研究の活性化、及びシニア研究員の派遣による国研の研究プロジェクトの推進と研究者の流動化を図ることを目的。
5 )) 日米先端科学技術シンポジウム(FoS) 日米の若手研究者・エンジニアが一堂に会し、産学官の異分野の交流を通じて、自らの研究開発に対する新しい可能性の発見や分野横断的な領域の開拓につながる場を提供することを目的。
-事業団で継続する事業- 1 )) 外国人研究者宿舎の整備・運営等 外国の研究者に我が国の研究機関において研究活動を行う機会を提供し我が国の研究環境を国際化することを目的とする。そのため、研究者が円滑に生活を開始し、研究活動に専念できる環境を整備するとともに生活支援を行う。
2 )) 国際シンポジウム 特定のテーマについて世界の第一線の研究者を結集して議論する場を提供することにより、情報の発信や交換等を通じた国際的な研究交流を促進。
3 )) アジア・太平洋マネジメントセミナー アジア・太平洋域内各国の共通の関心が高い科学技術に関する課題について討論を通じて課題の解決を目指すとともに、各国の相互理解を深め、併せて科学技術マネジメントの方策の検討と手法の向上を図ることを目的。
4 )) 日米先端工学シンポジウム(FoE) 日米の若手研究者・エンジニアが一堂に会し、産学官の異分野の交流を通じて、自らの研究開発に対する新しい可能性の発見や分野横断的な領域の開拓につながる場を提供することを目的。
5 )) 先端的共同利用施設利用促進型共同研究事業(SPring-8) 研究員の雇用も含めて外部機関との共同研究を支援することにより、大型放射光施設(SPring-8)の利用研究の促進に資する。
6 )) 異分野研究者交流促進事業 研究者の自由な意見交換の中から自らの研究へのヒントあるいは既存の学説にとらわれない新たな発想を生み出すため、異なる研究分野、組織の研究者等との出会いと議論の場(交流の機会)を提供し、新研究領域の創出を目指す。
(2) 研究交流促進事業(地域科学技術振興関係) 1 )) 地域研究開発促進拠点支援事業(ネットワーク構築型) 各地域における科学技術基盤の整備のために、地域の産学官連携を推進させるコーディネート機能の強化に着目し、科学技術コーディネータを地域の科学技術振興拠点に配置し、その活動を支援。
2 )) 地域研究開発促進拠点支援事業(研究成果育成型) 各地域における独創的新技術による新規事業の創出に資するため、各地域の科学技術振興拠点を活用し、大学等の研究成果を育成し、実用化につなげるコーディネート活動を支援。
3 )) 地域結集型共同研究事業 地域の大学、試験研究機関が結集して共同研究を行い、新技術・新産業の創出に資するとともに、事業終了後の地域COE整備を期待する。
4 )) 重点地域研究開発促進事業(研究成果活用プラザの設置、運営) 地域の独創的な研究成果を活用して「産学官の交流」及び「産学官による研究成果の育成」を推進し、技術革新による新規事業創出を図り、我が国の経済活性化に資する。
(3) 研究支援事業 1 )) 重点研究支援協力員派遣事業 研究支援者を国研・独法に派遣することにより、国研等における研究の効率的・効果的推進に資するとともに、特殊な支援技術の維持・継承を図る。
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第二部 評価意見及び提言 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1.研究交流促進・研究支援事業の全般的評価
事業団が実施してきた研究交流促進・研究支援のための各事業は、いずれも科学技術の振興にとって不可欠なものであり、またその実績もあがっており、全体として評価できる。 研究交流促進事業(人材交流・国際交流)及び研究支援事業の多くは、国立試験研究機関等の公的研究機関を対象として実施されたもので、制度的な制約が多いなかで国立試験研究機関等の国際化に貢献するとともに、競争的、流動的な研究環境をもたらしその活性化に寄与した点で意義は大きい。 なお、若手研究者を対象にした任期付き雇用制度については、国全体として実施された施策であるが、従来型の雇用慣行が残り、人材の流動化に対応した社会制度が未整備のなかでは、これらの制度だけでは十分でない面もあり、今後、任期雇用期間中の評価が次の処遇に反映されるような全体としての流動的なシステムが整備されるべきであるとの指摘があった。 研究交流促進事業のうち、地域科学技術振興関係の事業は、コーディネート機能の重要性にいち早く着目し、コーディネータを中心とした一連の事業を継続して実施してきた点で、先見性に優れた事業であったと極めて高く評価できる。 企業の研究開発部門の集約化・スリム化により地方の事業所における地域に密着した研究開発力が限られてきていること、また、今後、国立大学の法人化により、大学は教育研究の独自性や地域的特色を出すことを求められることからも、地域において科学技術を振興し、地域COEを構築していくことの重要性は増加するであろう。このため、今後とも事業団において、地方自治体、企業との連携、十分なコミュニケーションを確保しつつ、地域関係の事業を継続・発展させることが必要である。 一方、事業の実施にあたって、画一的な運用を行うと、地方は自由度が無いように感じる場合がある点に留意すべきである。また、研究成果の活用促進、社会へのアピールを更に促進する必要がある。 なお、今回評価の対象となった事業のなかには、一部、事業団から日本学術振興会に移管された事業があるため、以下の個別事業の評価及び提言においては、移管事業と事業団で継続する事業については区分して記述した。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2.個別事業の評価
(1) 研究交流促進事業(人材交流・国際交流) -日本学術振興会への移管事業- 1 )) STAフェローシップ事業 本事業は、大学以外の研究機関に外国人研究者を受け入れる事業として、我が国の科学技術活動の国際化に果たした役割は高く評価できる。 本事業がスタートした昭和63年頃においては、我が国の研究機関が対外的に閉ざされているとの批判があり、米国を始めとする外国の研究者の受け入れを促進することを目的として本事業は開始された。対米研究者交流のインバランスは結果的には解消されなかったものの、我が国の研究機関が国際的に開かれていることを示すことができた点で意義は大きい。 また、アジア諸国、特に、中国、韓国、インドからの研究者の来日が急増しており(3国からのフェローが全体の32%を占める。最近の5年に限れば42%。)、これらの国々の研究者との交流が深まり、知日派、親日派の研究者が増えることは、アジア地域で我が国がリーダーシップを発揮していく上で重要である。 2 )) 研究協力者海外派遣事業/若手研究者海外派遣事業 国立試験研究機関等の研究者を海外に派遣する事業であり、上記のSTAフェローシップと相まって、我が国の公的研究機関の国際化に大きく貢献した事業であると評価できる。また、ポスドクであって公的研究機関への就職を希望する者にも機会を与えた点はユニークであり有効に機能した。 なお、研究協力者海外派遣事業において旧ソ連・東欧諸国が主たる派遣先の一つであったが、冷戦終結後、同地域の研究環境が激変し、多くの優れた研究者が米国、西欧に流出したことを考えるとこれらの地域については、派遣ばかりでなく受け入れ強化も検討すべきであった。この点については、事業団として対応することには限界があり、国全体として柔軟に対応する必要があったと考えられる。 3 )) 科学技術特別研究員事業(ポスドク派遣事業) 若手研究者(ポスドク)を任期付きで国立試験研究機関等に派遣する事業であり、若手研究者の育成、国立試験研究機関等における研究環境の流動化等の観点からかなりの成果をあげた事業と評価できる。特に、上記 1 )) 、2 )) の国際交流の事業とともに国立試験研究機関の活性化には非常に有効であった。本事業は国の「ポストドクター等1万人支援計画」の実施事業の一つとして、同計画の達成に貢献した。 任期終了後の就職状況については、アンケートによれば退職3年後において回答者のうち約80%の者が常勤の職についている※。しかし、国全体としてみれば先に指摘したような問題があり、今後、本事業等の実績を踏まえて社会全体としての流動化が促進されることが望まれる。 (※:平成11年2月末までの辞職者427名を対象としてアンケート調査を実施し、回答のあった229名のうち191名が常勤の職についている) (注)FoS(日米先端科学技術シンポジウム)も日本学術振興会に移管されたがその評価については他のシンポジウム・セミナー等とともに下で述べる。 -事業団で継続する事業- 1 )) 外国人研究者宿舎の整備・運営等 外国人研究者に対する手厚い支援事業であり、来日研究者の日本の印象を良くすることが期待できる。 ただし、平成3年度に開館した第一宿舎(竹園ハウス)の稼働率が、開館直後から約90%と高かったことを考えると、第二宿舎(二の宮ハウス。平成13年度開館)はもう少し早く実現する必要があったと考えられる。 外国人研究者宿舎の主たる対象であるSTAフェローシップ制度が日本学術振興会に移管されたので、今後の宿舎の運営については、大学関係の外国人研究者も対象にすることも含めて検討が必要である。 2 )) 国際シンポジウム、セミナー等 (FoE(日米先端工学シンポジウム)、FoS※(日米先端科学技術シンポジウム)、国際シンポジウム、アジア太平洋マネジメント・セミナー) (注)※は日本学術振興会に移管 これらの事業はそれぞれ特徴があり、順調に実施されており、評価できる。運営にあたって、事務局を事業団が担当し、研究者の負担を軽減していることも評価できる。これら事業で得られた情報・人脈が他の事業に生かされることが望ましい。 ただし、成果の広報については工夫の余地があると考えられる。またオーガナイザーと事業団事務局との意志の疎通を良くすること、オーガナイザーが準備のための十分な時間を持てるようにすることが重要である。 3 )) 異分野研究者交流促進事業 本事業は、異なる研究分野・領域の研究者に出会いと議論の場を提供し、新しい研究領域、課題を創出することを目的とするもので、研究論文の作成や共同研究につながった事例があるなど有効に機能している事業として評価でき、今後更に発展させるべきである。交流の結果を具体的な計画に結びつけられれば共同研究等への誘導効果は非常に大きいと考えられる。 また、異分野研究者交流が一層促進されるよう、参加者の選定にあたっては、より広く呼びかけるなど運営の改善を図っていく必要がある。 4 )) 先端的共同利用施設利用促進型共同研究事業(SPring-8) SPringー8の特色を生かした他に例を見ない産学官の共同研究を支援する事業であり、有効なものと評価できる。このような共同利用施設の共同研究は有効なものであり、今後更に発展させるべきと考える。 (2) 研究交流促進事業(地域科学技術振興関係) 1 )) 地域研究開発促進拠点支援(RSP)事業/地域結集型共同研究事業 地域における研究成果の育成、実用化のための体制整備に関する事業であり、重要な役割を果たすコーディネート機能は良く発揮され成果も順調にあがっていると評価できる。また、この事業を通じて地域間の交流が促進された点にも意義がある。 問題は、地域における活動がどのように根付くかにあり、現状では多くの地域が何らかの国からの継続投資を期待している。本事業についても、終了後、他の事業、制度を活用して本事業の成果を一層発展させることが期待される。 また、地域のニーズを良く把握している公設試験研究機関や学会の支部との連携を深めることが有効である。 2 )) 重点地域研究開発推進事業(研究成果活用プラザの設置・運営) 研究成果活用プラザを設置して地域の活動の拠点とし、コーディネータをしっかり配置して様々な事業を地域と密着して実施するのは大変重要であり、意義がある。 7地域において画一的な事業を推進することはさけるべきであり、また、今後近隣県との連携を図りながら、設置県の枠を越えた事業を更に推進する必要がある。 地域住民により魅力あるものにするため、更に新しい人的ネットワーク形成を推進すべきである。 (3) 研究支援事業 1 )) 重点研究支援協力員派遣事業 国立試験研究機関の大きな課題の一つは、研究支援者、補助者のポストが不足していることであり、これを補い、国立試験研究機関の足腰の強化に大きく貢献したという観点から本事業は意義があった。 しかし、実際にこの事業に参画した者の学歴を見ると、博士号取得者が多く、また、任期終了後は「研究職として職場を探したい」と回答した者が多かったこと等から、制度の当初の目的どおり実行されたのか、すなわち、博士号取得者の常勤ポスト待ちに利用されたのではないかとの疑問がある。 一方、この点については、研究の高度化により博士号取得者クラスの能力を有する支援者が必要であること、また、博士号取得者ではあるが研究者にはならなかった者にもその能力を発揮できる機会を提供する意味があること等の理由から、特に問題ではないとの意見もあった。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
3.提言
委員会は、以上のとおり、事業全体として有効な活動を実施しているとの評価意見をまとめた。更に成果をあげることを期待して、研究交流促進・研究支援事業全体として特に留意、検討すべき事項を提言として述べることとする。 なお、事業団は平成15年度中に独立行政法人化されることとなったが、研究交流促進・研究支援事業の重要性及び公共性はいささかも変わるものではない。独立行政法人化により活動に自由度が確保できることが考えられる一方、業務の効率性がより一層求められることになる。公共性と効率性はある面では両立しづらい部分があるとしても、本報告における評価及び提言の趣旨を汲み科学技術振興のための一層の努力を期待する。 また、日本学術振興会に移管された事業に関する提言等については、これまでの事業団の実績に基づき評価を行い、より有効な事業とするためにまとめたものであり、実施主体が代わっても参考とされることを期待する。 (1) 研究交流促進事業(人材交流・国際交流) 1 )) 独法研究機関等のニーズ把握による事業展開 事業団の研究交流事業は、国立試験研究機関を対象にして制度設計されたものが多い。現在、ほとんどの国立試験研究機関が独立行政法人化され、その研究環境も変化してきている。今後我が国においてどのような研究交流事業のニーズがあるのか、事業団として調査・分析を行い、今後の事業の展開方策を検討する必要がある。 例えば、本委員会の議論においては、人材の流動化に対応して、流動的な人材を結集するプロジェクト的な研究組織を各研究機関内に整備することは、事業団が今後取組むべき事業ではないかとの指摘があった。 2 )) 人文・社会科学も含めた交流 異分野交流事業等については、自然科学のみならず、人文・社会科学も含めた交流を更に行い、発展させるべきである。自然科学を中心とした科学技術はこれまで多くの成果を生んできたが、今後、科学技術のバランスのとれた発展のためには、自然科学に加えて人文・社会科学の知見も結集した新しい科学技術の潮流を形成していく必要がある。 3 )) 参加者の拡大等 シンポジウム等においては、広く一般から参加者を募ることが重要であり、また、透明性確保の観点からオーガナイザー等と直接関係の無い者にも参加してもらうことに留意すべきである。 (2) 研究交流促進事業(地域科学技術振興関係) 1 )) 地域経済活性化につながる研究の推進 各地域においては経済活性化の引き金になるような産業をいかに育成していくかが大きな課題となっており、地方自治体、関係省庁等により各種施策が講じられている。事業団の地域科学技術振興関係事業においても、様々な施策との連携を図りつつ地域経済の活性化につながるような研究成果を生み出していくことが重要である。 また、この観点から、TLO機能等との連携強化、ベンチャー創設のための支援機能拡充が課題である。 2 )) コーディネータの育成 次世代のコーディネータの育成が重要である。事業の立ち上がり時期においては経験の豊富なコーディネータが必要であるが、例えば、経験豊富な者と若いコーディネータを組み合わせるなどの工夫を行い、人材養成を行うべきである。また、博士の学位を取得した研究者に一定期間、産、官の環境を経験してもらいコーディネータのプロを育てるシステムを検討してはどうかと考える。 3 )) 成功事例のノウハウの共有 成功したケース、失敗したケースの事例研究を行い、ノウハウの共有化を促進すべきである。例えば、各地域の代表者の連絡会議では、「交流を深めるためには合宿討論が有効であった。」、「事業開始直後は、まず、コーディネータの存在そのものを地域の産学官関係者に知ってもらうことが重要である。」といった意見が出されており、このような各地域の経験を共有化することは重要である。 (3) 研究支援事業(重点研究支援協力員派遣事業) 1 )) 独法研究機関等のニーズ把握による事業展開 本事業も、受け入れ機関や派遣された者の意見を分析し、国立試験研究機関の独立行政法人化を踏まえて、研究現場にどのようなニーズがあるかを把握し、将来の事業の展開を検討する必要がある。 (4) 日本学術振興会への移管事業 人材交流については、大学、独法研究機関、国研を含め、国全体として、適切な人材を海外に派遣し、また、受け入れる体制を作ることが重要である。 独法研究機関、国研は今後も我が国の科学技術振興の上で重要な役割を果たすものであり、若手研究者の海外派遣やポスドク派遣事業等については、独法研究機関、国研へのきめ細かい配慮を希望する。 また、人材交流事業の評価に関して、事業に参加した者の意見及び受け入れ機関の意見を把握し、それらを踏まえて事業の評価、改善を実施していくことが重要であることを指摘したい。 ポスドク派遣事業に関しては、ポスドク期間中の評価が次のステップにつながるような社会全体としての流動的なシステムが必要であり、これまでの事業の成果を踏まえて、我が国全体として、制度改善、社会意識改革への継続的努力が望まれる。 |
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