インターネット情報等の暗号化のための乱数生成装置の開発に成功(科学技術振興事業団 委託開発事業) 科学技術振興事業団(理事長 沖村憲樹)は、東北大学名誉教授・東北文化学園大学科学技術学部 教授 高木 相氏、九州工業大学大学院 情報工学研究科 教授 吉田隆一氏、九州産業大学 情報科学部 教授 廣田豊彦氏らの研究成果である「白色雑音による物理乱数生成装置」を当事業団の委託開発事業の課題として、平成11年3月から平成14年3月にかけてシステム工学株式会社(代表取締役社長 長井剛一郎、本社 東京都千代田区神田錦町1-15-11福田ビル、資本金2千万円、電話:03-3292-7816)に委託して開発を進めていた(開発費約2億円)が、このほど本開発を成功と認定した。
インターネット、携帯電話等の普及に伴い、電子情報の送受信が増大するにつれ、電子情報の盗聴や改ざん、なりすまし等の犯罪が年々増加傾向にあり、情報セキュリティの確保が強く要望されている。 暗号技術は、直接的に情報を守るという機能を持つとともに、署名など他の情報セキュリティ技術の要素となることから、暗号化による情報セキュリティが図られてきている。その暗号化の多くは乱数を不可欠としており、現在は、関数の組み合わせによる計算式を演算して生成される疑似乱数が使用されている。しかし、疑似乱数の場合、関数や初期設定が人為的に漏洩する危険性や、乱数生成パターンが予測され得る可能性があり、最終的に暗号が破られる恐れが指摘されている。
一方、熱電子雑音や放射能等の物理現象に基づく物理乱数は、予測不可能性が高く、理想的な乱数であることが知られている。本新技術では、バイポーラトランジスタ等の半導体素子に逆バイアス電圧を印加することにより得られる白色雑音(周波数に依存せず全周波数成分を均等な強さで含んでいる雑音)を利用し、回路等からの雑音は押さえつつ、増幅、二値化することにより、予測不可能性が高い物理乱数を発生することを可能にするものである。 本開発では、乱数の一様分布性についても、充分実用となることを確認し、また、装置形状も50mm×100mm×20mm以下の小型化に成功した。また、本乱数生成装置を利用して現段階で世界最強と言われている電子署名方式KPS(鍵事前配送方式)への応用についてもソフトおよびハードの開発を行った。 開発品では、パソコン等に外付けする形態となっているが、KPSや乱数評価装置も組み合わせ、ワンチップ化することも可能である。
本新技術には、次のような特徴がある。 ・暗号化に利用できる安全な物理乱数を簡易に生成できる。 ・半導体素子を雑音源とし、装置の小型化が可能となる。 ・乱数を任意の長さに自由に設定できる。 そのため、電子メール等の暗号化の他、企業等の電子情報の暗号化データベースの構築、今後普及が見込まれるインターネット接続型の家電等のID暗号鍵等、情報セキュリティへの利用が期待される。
(注)この発表についての問い合わせは以下の通りです。
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This page updated on August 29, 2002
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