科学技術振興事業団報 第252号
平成14年8月28日
埼玉県川口市本町4-1-8
科学技術振興事業団
電話(048)226-5606(総務部広報室)
URL http://www.jst.go.jp

発振波長を高速で変えられる波長可変レーザーの開発に成功

(科学技術振興事業団 委託開発事業)

 科学技術振興事業団(理事長 沖村憲樹)は、理化学研究所 先任研究員 和田智之氏らの研究成果である「CW励起波長可変レーザー」を当事業団の委託開発事業の課題として、平成12年3月から平成14年3月にかけて高性能レーザー関連の理研ベンチャーである株式会社メガオプト(代表取締役社長 河津元昭、本社 埼玉県和光市本町11-58-307、資本金6,420万円、電話:048-469-3377)に委託して開発を進めていた(開発費約2億円)が、このほど本開発を成功と認定した。
(開発の背景)
物質構造や化学現象の解析におけるレーザー光分光には様々な波長のレーザー光が必要となる。このため、連続した波長を得る方法としては波長選択光学素子を機械的に動かす方法が取られてきたが、掃引速度が遅い、装置が大型であるなどの難点があった。
(開発の内容)
本新技術は、波長可変機構に光音響素子※1を利用した、発振波長を変えることの出来るCW励起波長可変レーザー※2の開発に関するものである。
(開発の効果)
本新技術による装置はこれまでのものに比べて、波長掃引速度が速く、小型であり、今後分光分析等の用途に幅広く使われることが期待される。


【注釈】
光音響素子※1:当てる音波の振動数を変えると通過光の波長が変化する結晶素子
CW励起波長可変レーザー※2:Continuous Wave(連続波)光を当てて励起した結晶から発する蛍光の内、光音響素子等で選択した波長の光のみを発振させて得るレーザー

 本新技術の背景、内容、効果は次の通りである。


(背景)
従来装置は、掃引速度が遅い、装置が大型であるなどの難点があった。

 物質構造や化学現象の解析におけるレーザー光分光には様々な波長のレーザー光が必要である。
 従来、波長可変レーザーにおける波長選択素子には、複屈折フィルターやグレーティングが用いられていた。これらの素子による選択波長を変化させる為には回転機構などの機械的駆動部分を必要としており、波長掃引速度が遅く、装置が大型であり、また、機械精度、操作性、周辺機器との適合性などの面でも制限があった。

(内容)
波長可変機構に光音響素子を利用し、CW励起発振波長可変レーザーを実現した。

 本新技術は、レーザー発振の光路内に光音響素子を挿入し、音響光学効果を利用して、選択した波長のみを光路方向に回折させることにより、レーザー発振波長を変化させることの出来る高機能な連続発振(CW)励起波長可変レーザーに関するものである。
 開発した装置は、レーザー媒質であるチタンサファイア結晶、チタンサファイア励起用の連続発振型YAGレーザー、共振器用ミラー、光音響素子及びコントローラー、補正プリズムにより構成されている。シンセサイザで作られた音響周波数信号はトランスデューサを介して光音響素子に音響波として入力される。音響波の周波数に応じて、光音響素子により回折される方向がずれ、発振波長がずれる。補正プリズムは、波長可変域に亘り、光路がミラー面に垂直に入射するよう配置されている。
 波長可変域は、725~925nm、スペクトル幅が0.02nm、長期出力安定度も±2.3%以下と優れた特性を有している。

(効果)
従来品に比べて、波長掃引速度が早く、小型であり、今後分光分析等の用途に幅広く使われることが期待される。

 本新技術は波長掃引速度が従来のものに比べて約1,000倍速く、また、可動部を要しないため小型であり、今後分光分析等の用途に幅広く使われることが期待される。
 また、連続波であることから、パルス波に比べて、低出力レベルで観測ができ、特に生体に損傷を与えずに観測する応用分野(生体ラマン分光等)が開けることが期待出来る。


・開発を終了した課題の評価
・図1基本構成
・写真1装置外観

(注)この発表についての問い合わせ先は以下の通りです。
科学技術振興事業団 開発部第二課 日江井純一郎、菊地 昭
[電話(03) 5214-8995]
株式会社メガオプト 技術開発部 赤川和幸
[電話(048)-469-3377]


This page updated on August 28, 2002

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