薄片状酸化チタン(化粧品等の紫外線遮蔽材)の開発に成功(科学技術振興事業団 委託開発事業) 科学技術振興事業団(理事長 沖村 憲樹)は、独立行政法人 物質・材料研究機構 物質研究所長 渡辺 遵氏、主席研究員 佐々木 高義氏らの研究成果である「微細薄片状酸化チタンの製造技術」を当事業団の委託開発事業の課題として、平成11年3月から平成14年3月にかけて石原産業株式会社(代表取締役社長 溝井 正彦、本社 大阪市西区江戸堀1丁目3番15号、資本金420億円、電話:06-6444-1451)に委託して開発を進めていた(開発費約2億円)が、このほど本開発を成功と認定した。
酸化チタン(TiO2)は、物理的、化学的に安定で、下地の色を隠す隠蔽力や着色性が良く、紫外線遮蔽効果があるなどの特性をもつため、塗料、プラスチック用など各種の顔料や化粧品用紫外線遮蔽材、電子部品用誘電体原材料などとして幅広く使用されている。また、最近では、酸化チタンの光触媒作用を利用して、脱臭材料、抗菌材料、防汚材料などへの展開も進んでいる。 酸化チタンの製造法としては、硫酸チタンを加水分解して焼成する硫酸法や四塩化チタンを高温で酸化する塩素法などがある。これらの製造法により工業生産されている酸化チタンの形状はほとんどが粒子状のものである。 化粧品分野などでは、従来の粒子状の酸化チタンは凝集性が高いため薄くむらのない塗布が難しいという問題があった。このため、展延性に優れた薄片状の酸化チタンが注目され、すでに実用化がなされている。しかし、この薄片状酸化チタンは、チタンアルコキシドを平滑面に塗布、乾燥後、機械的に剥がすというプロセスで製造されているため、薄片を薄くすることに限界があるなどの問題があった。薄片状の酸化チタンの厚みを薄くできれば少量の酸化チタンで物質表面を被覆でき、紫外線を効果的に遮蔽することが期待できるため、より薄く、展延性に優れた薄片状の酸化チタンの製品化が求められている。
本新技術は、酸化チタンとアルカリ金属塩を混合して焼成、酸処理することにより、シート状のチタン酸が積層した層状結晶を合成し、これをアミン系化合物水溶液中で攪拌して各層を剥離・分散させ、噴霧乾燥・焼成することにより中空状の酸化チタンを作成し、これを粉砕することにより微細な薄片状酸化チタンを製造するものである。 本新技術による薄片状酸化チタンの製造方法は以下の通りである。
本新技術には、次のような特徴がある。 (1) これまでにないナノメーターレベルの微細薄片状酸化チタンを製造できる。 (2) 薄片状酸化チタンは、展延性、密着性などに優れる。 (3) 殻が薄く、嵩比重が小さい中空状酸化チタン微粒子を製造できる。 (4) 中空状酸化チタン微粒子の粒径や殻の厚さを制御できる。 そのため、薄片状酸化チタンは、化粧品や、塗料分野での利用が期待される。また、薄片状に粉砕する前の中空状酸化チタン微粒子についても、肌に対する展延性に優れるなどの特徴を持つため、化粧品などへの利用が期待され、更に、視認性、耐熱性に優れるなどの酸化チタン本来の特徴に加え、嵩比重が低く、流体追随性に優れるという特徴も持つため、流体計測システム用のトレーサーとしての利用も期待される。
(注)この発表についての問い合わせは以下の通りである。
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This page updated on August 22, 2002
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