科学技術振興事業団報 第246号
平成14年8月21日
埼玉県川口市本町4-1-8
科学技術振興事業団
電話(048)226-5606(総務部広報室)
URL http://www.jst.go.jp

細胞培養用の低蛍光性マイクロプレートの開発に成功

(科学技術振興事業団 委託開発事業)

 科学技術振興事業団(理事長 沖村憲樹)は、東京医科大学助教授 渡辺泰雄氏らの研究成果である「低蛍光性マイクロプレートの製造技術」を当事業団の委託開発事業の課題として、平成12年3月から平成14年3月にかけて、株式会社シナップス(代表取締役社長 熊崎武廣、本社 東京都あきる野市小川651-3、資本金1,000万円、電話042-550-1560)に委託して開発を進めていた(開発費約1億円)が、このほど本開発を成功と認定した。

(背景)
 生体培養細胞研究の中で用いられている従来技術のマイクロプレートは容器材質による高い蛍光バックグラウンドを有し、高精度の観察や測定が困難である。細胞内蛍光を即時的に且つ高精度に観察出来るマイクロプレートが求められている。
(内容)
 本新技術は、精密射出成型品の底面に、蛍光発光の低い人工石英ガラスをUV硬化で均一に接着させたハイブリッド型のマイクロプレートである。
 細胞内微量蛍光標識物質の高感度観察や顕微鏡写真や蛍光顕微鏡写真観察において、鮮明な写真撮影を可能にし、測定倍率も従来の2倍となった。
(効果)
 本新技術のマイクロプレートは細胞や組織に損傷を与えることなく良好な培養が可能であり、(1) 細胞・免疫機能分析、(2) 超微細機能・形態分析、等の様々な分野に広く利用されることが期待できる。
 本新技術の背景、内容、効果は次の通りである。

(背景)
細胞内蛍光を即時的に且つ高精度に観察出来るマイクロプレートが求められている

 生体内微量物質やガン遺伝子等の生体内動態を観察するため、一度に多くの試料が測定可能な多穴型マイクロプレートが生体培養の際に広く使用されている。最近、生体内物質の標識物質として特異性が高く、且つ感度の向上した蛍光試薬が考案され、新しい知見を得る研究手段として広汎に多穴型マイクロプレートが使用されるようになった。
しかし、従来技術のマイクロプレートは一体成形型のポリスチレン製であるため、容器材質による蛍光発光が高く、高精度な観察が困難であった。細胞内蛍光を即時的に且つ高精度に観察出来る低蛍光性マイクロプレートが求められている。

(内容)
多穴型マイクロプレート底面にUV硬化による蛍光発光強度の低い人工石英 ガラスを均一に接着させたハイブリッド型のマイクロプレートである

 本開発のマイクロプレートは射出成型品の多穴型マイクロプレート底面にUV硬化による蛍光発光の低い人工石英ガラスを均一に接着させたハイブリッド型のマイクロプレート(写真2)である。従来技術(写真1)では容器材質による蛍光発光強度が高いために困難であった細胞内微量蛍光標識物質の動態を高精度な定量を可能にすると共に、細胞内微細構造や微量物質の機能を測定可能にした。さらに薄型人工石英ガラスであるため、顕微鏡観察写真や蛍光顕微鏡観察写真において、鮮明な写真撮影(写真3)が可能となった。従来技術のマイクロプレートでは約20倍が限度に対して、約40倍の高倍率で細胞形態が確認可能(写真4)なため、刺激物質や病原微生物、更には環境条件による細胞変動の実態や細胞内起因物質の同定を明らかにすることが可能となった。

(効果)
細胞・組織観察等の分野に広く利用されることが期待できる

 本新技術のマイクロプレートは細胞や組織に損傷を与えることなく良好な培養が可能であることが実証され、(1) 細胞・免疫機能分析、(2) 超微細機能・形態分析、(3) 脳および代謝系疾患研究分野、(4) 遺伝子系研究分野、(5) 環境科学解析等の精密細胞・組織観察等の分野に広く利用されることが期待できる。


・開発を終了した課題の評価
・写真1従来技術の使用例
・写真2人工石英ガラスを底面に接着させたハイブリッド型マイクロプレートの開発品
・写真3ローダミン蛍光染色標本写真
・写真4開発品の外観

(注)この発表についての問い合わせは以下の通りです。
科学技術振興事業団 開発部第二課 日江井純一郎、福富 博 [電話 03-5214-8995]
株式会社シナップス 代表取締役社長 熊崎 廣武 [電話 042-550-1560]


This page updated on August 21, 2002

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