科学技術振興事業団報 第2号

平成8年11月14日
埼玉県川口市本町4-1-8
科学技術振興事業団
電話(048)226-5606(総務部広報担当)

生活・社会技術開発事業において「人工現実感による機能障害回復システム」を委託開発課題に選定ならびに開発企業を選定

 科学技術振興事業団(理事長 中村守孝)は、長崎総合科学大学教授 竹田仰(たかし)氏ならびに九州リハビリテーション大学校教授 中山彰一氏の研究成果である「人工現実感による機能障害回復システム」を委託開発課題として選定するとともに開発企業を選定した。本委託開発課題は、福岡県からの提案に基づく「生活・社会技術開発事業」によるものである。
 従来、脳卒中や交通事故等の後遺症による機能障害者のリハビリ訓練は、麻痺等の運動機能障害に対しては電動歩行器等の器械器具による運動療法が、言語障害等の高次脳機能障害に対しては絵カードや積み木を用いた感覚訓練が一般的であった。しかし、これらの訓練は、例えば上肢運動のみあるいは視覚訓練のみといったように個別的で、また、単調で精神的苦痛を伴い易い等の問題も残されていた。
 本新技術はコンピュータによる映像・音響及びこれに連動して運動負荷を与える体感訓練装置により種々の仮想環境を創りだし(人工現実感:バーチャルリアリティー)、この仮想環境下においてベッド期から座位期、立位期、歩行期と各回復時期に対応した一連の訓練を行うことで、運動機能障害や高次脳機能障害の回復を図るシステムに関するものである。
 機能障害者の早期回復、社会復帰のためには上・下肢の運動機能と視覚・聴覚等の感覚機能を協調させて訓練を行うことが効果的であり、ベッド期を含む早期から訓練を開始することが望ましいとされている。
 本システムでは映像・音響と、これに連動して筋力訓練や歩行訓練を行うことのできる体感訓練装置により、病院内においても、例えば、車や段差に注意しながら道を歩くといったような感覚機能と運動機能を同時に必要とする実社会の場面に近い状況での訓練を行うことができる。また、映像・音響や運動負荷を変えることで障害の種類、程度に応じて適正な訓練プログラムを選択することが可能である。さらに本システムでは患者は楽しみながら訓練を行うことができ、回復度や達成度が実感できるので意欲向上に適している。このため、脳卒中や各種傷害後の機能障害者のリハビリ訓練に幅広く利用され、早期回復と社会復帰を支援するものと期待される。
 本新技術の開発は、松下電器産業株式会社(代表取締役社長 森下洋一、本社大阪府門真市大字門真1006番地、資本金1,987億円)及び株式会社幸袋工作所(代表取締役社長安部義孝、本社 福岡県嘉穂郡庄内町大字有安958-23、資本金2億5千万円)に委託する予定で、開発期間は4年6ヶ月、委託開発費は約10億9千万円の予定である。今後、科学技術庁長官の認可を受けた後、新技術の開発を実施する。

「人工現実感による機能障害回復システム」(背景・内容・効果)

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